川崎稲毛神社の山王祭にて、人災疫病禍のため令和元年以来三年ぶりに奉納された、間宮社中による江戸里神樂を樂しむ。
演目は大國主命(おおくにぬしのみこと)が實權を握ってゐる中津國を献上させやうと、天照大御神(あまてらすおおみかみ)が次々に使者を送る内容で、「高天原神集(たかまがはらかみつどい)」から始まり、
第一の使者である天之菩比之命(あまのほひのみこと)は酒好きであることを大國主命に衝かれて任務に失敗する「天之菩比之上使」、
第一の使者が三年を過ぎても帰って来ないので、第二の使者として遣わされた天若日子(あめのわかひこ)は、あらうことか大國主命の娘である下照姫(したてるひめ)に一目惚れして結婚し、
そのまま中津國に居着いてしまったため、
八年後に様子見に遣はされた雉名鳴女(きじのなきめ)を、大國主命の侍女に唆されて射殺して結局は自身も命を落とすことになる、「天之返矢(あめのかえしや)」の三座。
この「天之返矢」の後半には高木神(たかぎのかみ)の従者と大國主命の侍女が“見立て”の可笑し味をたっぷりと見せる所作が演じられ、
(※箒を三味線に見立てて小唄の稽古)
(※操り人形の三番叟)
(※桶を天蓋に見立てて虚無僧)
悲しい結末を和らげる。
今回も三年前に觀た社中の人々がそのまま出演されてゐて、皆さん無事だったのだな、と懐かしく、また嬉しくなる。
“無事”であることの有り難さとは、すなはちかう云ふことなのだ。
しかし、三年後のいまでは真夏でもマスクを着用しなければ安心できない時世にならうとは、誰が想像したらう……!
今年は露店も三年ぶりに出、ただし數は例年より制限したとのことだが、それでもさほど少ないとは思はず、
また境内も賑やかと云ふよりただ騒々しく感じられたのは、三年ぶりで私の耳が感覺を取り戻せなかったからか……?