迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

記録の妙、資料の聲。

2019-07-06 22:07:01 | 浮世見聞記


日本郵船歴史博物館の開館25周年を記念した企画展「生々流転~日本郵船歴史博物館の歩み~」を観る。


企業が運営する博物館を“企業博物館”といい、かうした文化施設は日本に1000館以上あるとされ、世界で一番の数と云ふ。

それは古いの公家日記にみる如く、記録好きな日本人の気質が根底にあるやうだ。


かうした展示施設は、企業の足跡を記した貴重な資料の散逸を防ぐ役割も果たしており、失火で文化財をほぼ全滅させた海外某國のお粗末すぎる一件を考へると、日本人の記録保存に対する意識は、かなり高いことを認識させらるる。

──その反面、目新しい文物が流入するとすぐそちらへ手を伸ばし、それまでの文化を簡単に棄て去るのも日本人の気質だが……。



海運関係者たちの積極的な協力で誕生したこの海運の博物館は、落ち着ひた内装の美しさと、企画展の手頃な広さが好きでちょくちょく訪れるが、展示物の解説文は二名の館長代理の手によることを、初めて知る。

“餅は餅屋に聞け”のごとく、その文物の解説はその道で生きる人に限る。

能楽公演で學者センセイが出て来て演目解説とやらを始めると、決まって要領の惡い駄弁りで余計に話しをムズカシクしてゐる事実を考へても、然り。



地道に集められ、大切に保存されてきた資料を、手頃な入館料で実見して己れの心に写しとる──

そしてそこから己れの考へを見出せたとき、私はいま生きてゐることの深い充実感をも、見出すのである。

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