迦陵頻伽──ことだまのこゑ

手猿樂師•嵐悳江が見た浮世を気ままに語る。

夜照奮舞!

2019-12-15 22:06:00 | 現代手猿樂

横浜市南区の蒔田公園で開催された「光のぷろむなぁど」の“水辺の光コンサート”に参加し、現代手猿樂の「河原左大臣(かわらのおとど)」を披露する。

長期予報の「雨」は大ハズレ、昨年のやうに涙をのまされずに済んだのは、本當に何よりだ。




手作りロウソクに彩られた会場の公園を散策しつつ、歌あり、ダンスあり、男性アイドルグループあり、和太鼓ありの、こちらも色彩豊かな番組を、まずは支度時間ギリギリまで樂しむ。


──そこから発せらるる“正の氣”を貰ふことで、おのれの気持ちを高揚させるためなり。

人の作品は、また良き師なのである。



「河原左大臣」は世阿弥の「融」から取材した手猿樂で、昨秋に型(振付)は出来上がり、メモをしてそのままになってゐたが、今回實行委員会の方から参加のお誘ひをいただひたのを機に、初演を決める。

装束の狩衣──無地なので正確には布衣(ほい)だが──は十年以上前に骨董店で手に入れたもの、扇は大阪在住時代に四天王寺の御縁日で手に入れたもので、


「いつか公家の役を演じる機会を得た時に使おふ……」と思へどその機会も縁もなく、どちらもただただ長ひ月日を箪笥のなかで過ごす。

しかし今回、もっとも相応しい場でこれらに陽の目を見せられる──夜なので陽の目は妙な表現だが──ことが出来て、やっと孝行した気になる。




今朝の予報ほど寒くもなく、スタッフの方々の親切な対應に支へられ、わずかな風が装束の袖を心地よく揺らし、まずは恙なくつとめけり。

照明の逆光で見物の姿は全く見えなかったが、舞ひ納めたあとでけっこう拍手があり、こんな有難ひことはなかりけり。

もちろん實際に演じて見へてきた課題は多々あれど、先月にすぐ近くのフォーラム南太田で観た山口小夜子のドキュメンタリー映画で教へられた、

「表現者として堂々と!」

は、まず實践出来たと自負せり。


帰り道、京浜急行線の驛前の自販機で買った甘酒缶が美味かった!





帰宅し、改めて面に御礼を述べやうとして、「あっ!」となる。

面が、明らかに引き締まった綺麗な表情になってゐる!


面は間違ひなく生き物。

無表情の物体などではない。



面も、今宵は樂しかったやうだ。


「またよろしく」


私には、最高の“仲間たち”がゐる。










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