東京都品川區西大井五丁目にて、“大井の大佛”と刻まれた石標の立つ寺院の前を通りかかり、この界隈に大佛があったかなぁ、と氣になり足をとめる。
その寺院は「歸命山 養玉院如来寺」と云ひ、寛永十二年(1635年)に創建された天臺宗の靈場云々。
件の“大佛”とは、境内の奥にある如来堂に安置された五体の木像佛を云ひ、高さ3.21メートルの大日如来を中尊として橫一列に並んだ、いはゆる「五智如来」云々。
金色の尊顔には、浮世に蔓延する様々な苦難から逃れ、現世利益を得やうとする民衆の願ひが刻まれて、なるほど私のやうな俗人が縋りたくなる靈力が漂ってゐる。
お堂の右橫から自由に入って拝觀できるやうになってゐたので、お言葉に甘へて五智の足許より、古へ人より變らぬ願ひを、私も唱える。