川崎浮世繪ギャラリーにて、「楊洲周延」展を觀る。
終焉近き江戸時代に武士の家に生まれ、明治“御一新”の世に江戸以来の手法に新風を取り入れた浮世繪師として名を成した楊洲周延(やうしう ちかのぶ)の作品展は、十年以上前に原宿の太田記念美術館で觀て以来だと思ふ。
今回展示の連作美人画「眞美人」は大正時代まで賣られ續けたと云ふ人氣作なれど、
(※案内チラシより)
しょせんは定型化した江戸美人画の延長にすぎず、洋装の女性たちに風俗的な興味を覺えたほかは、
(※同)
そのまま一瞥して流す。
明治二十年代に發表した「東風俗 福づくし」と云ふ連作のなかに、櫻の下の美人を描いた一枚があり、その題名の「馥郁(ふくいく)」とは、“良い香りの漂ふさま”を意味する言葉云々。
馥郁──
いま近所で、蠟梅が見頃を迎へてゐる。
なるほど、あの眺めを「馥郁」と云ふのかと、大いに勉強になったひととき。