今回は本を読んだ後に、BBCのドラマも続けて見てみました。
ジョーン・ヒクソン版のミス・マープルシリーズは原作にかなり忠実に作ってありますが、もちろん時間の制約もあるし、原作通りというわけにはいきません。
でも登場人物を減らしたり、都合よく登場人物の一人が、ヒントをくれたりと、うまく変えてあるんですよ。
それから原作では伝えきれない人物の雰囲気が映像だと強烈に印象に残ります。
殺人事件の舞台になる"yew tree lodge" (いちい荘)の主、レックス・フォーテスキューの「嫌な奴」ぶりは、したたり落ちそうなマーマレードを塗ったトーストを食べる様子で見事に描かれていました。
だいたいいつも「原作と違う!」と文句を言う私ですが、このミス・マープルシリーズは、原作、ドラマ、甲乙つけがたい。
大好きな児童書「トムは真夜中の庭で」 にも何度も出てきた、yew tree イチイ。
この「ポケットにライ麦を」でもミステリーの舞台だけでなく重要な小道具になっています。
BBCのドラマでは、最初にこのイチイの木が映し出されるので、こういうところも映像ならではでしょうね。
日本語版の表紙はまさにこのイチイでした。
イチイって、なんだかすごくイギリスっぽい。
ミス・サマーズについて「仔羊のようにおとなしい女だが、年齢もそう若くないうえに、なによりも陰気くさい顔立ちで損をしていた」と「もう若くはなく、羊みたいに柔和で気弱そうなそうな顔をしている」では受ける印象が少し違ってくるなと思いました。それ以上を読んでいませんが、翻訳本を選ぶとしたら迷いそうです。
翻訳者によってこんなに違うもんなんですね。