テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

そこに魔法の扉は。

2011-11-03 23:18:21 | ブックス
 こんにちは、ネーさです。
 文化の日――祝日の今日は、なぜかマラソン大会があちこちで??

「こんにちわッ、テディちゃでス!
 みなさんッ、おけがしないでェ、はしッてねッ!」
「ぐるるー!がるるがるるぐるぐる!」(←訳:虎ですー!マイペースでGO!)

 マラソンマニアならぬ活字マニアの私たちが
 文化の日の読書タイムに御紹介いたしますのは……
 アート好きさんには堪らない、こちらの一冊を、さあ、どうぞ~!

  


 
           ―― 個人はみな絶滅危惧種という存在 ――


 
 著者は舟越桂(ふなこし・かつら)さん、2011年9月に発行されました。
 『彫刻家・舟越 桂の創作メモ』と副題が付されているこの御本は、
 舟越さんの彫刻作品を撮影した写真集であり、
 ドローイング集であり、
 創作メモとエッセイが混在する、
 なんとも贅沢な“作品集”といえましょうか。

「むッ?
 ひょうしのォ、ちょうこくにィ、へんなァ、ひとかげがッ!」
「がるるるぐるがるぐるー!」(←訳:彫刻の天辺に誰かいるー!)

 御本の表紙になっているのは、
 『見晴らし台のスフィンクス』(2008年)。

 ヒトなのか、エイリアンなのか、
 想像上の生物を超えた魔物さんなのか……?
 けれども、ちょっとヘンです。
 像の天辺、頭頂部から、何かが――誰かが、顔を出している、ような?
 誰なのかしら、これって?と、
 よくよく目を凝らしてみると……
 あららっ?
 この小さな像って、
 著者の、
 つまりは作者の、舟越さん御自身じゃありませんこと?

「あはッ♪ そうかもッ♪」
「がるるぐるがるぐるる?」(←訳:像の上が見晴らし台なの?)
「なんだかァ、たのしそゥ!」

 峻厳な中にも
 ほのかなユーモアをたたえる、
 舟越さんの彫刻作品。
 創作メモは、ほとんど詩集のようです。
 文章は、短編小説の断片であるかのよう……。

  Chapter1は『アトリエは迷いの場であり、迷うから道を探す』
  Chapter2は『鐘を鳴らせ!俺は生きているんだ!』
  Chapter3は『芸術は作られるのではなく生まれるのだろう
       私たちのやれることなど そう大きなわけがない』
  Chapter4は『思いよ世界の涯てまで飛んでゆけ』

 ノミをふるいながら、
 木肌をその手で撫でながら、
 舟越さんはこんな言葉を囁いているのでしょうか。

「ふむむゥ~…
 あとりえッてェ、ふしぎなァところォ、でスねッ!」
「ぐるるがるがるぐる!」(←訳:原始の森みたいだ!)

 私ネーさ、もうずいぶんと前のことですが、
 とある画廊さんで、
 舟越さんの作品を拝見した経験があります。
 いまも、ありありと想い起される強烈な印象は、
 《あたたかさ》でした。
 大きな美術館や公園に設置された鋼鉄のオブジェは、
 立体作品、ではあるけれど、
 彫刻……ではないんじゃないかなあ?
 彫刻って、こういうものなんだ!
 そんな風に考えたことを、
 この御本のページを捲っては、
 また何度も何度も思い返しています。
 
 ずっと眺めていたい彫刻、
 傍にいて欲しい彫刻、
 それはどのようなものかと問われたら……?

「こうてつはァ、いやでスゥ!」
「ぐるるぐるがるがるぐるる!」(←訳:冷え冷えしてるのもイヤだよう!)

 アート好きさん、
 写真が好きな御方、
 舟越さんのファンの方々も、
 世界を優しく見張るスフィンクスの国のドアを、
 とんとん!と叩いてみてくださいな。
 
「まほうのォ、とびらよッ!」
「ぐるるるがるる!」(←訳:そうっと開け!)


 
コメント
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