テディちゃとネーさの読書雑記

ぬいぐるみの「テディちゃ」と養い親?「ネーさ」がナビする、新旧の様々な読書雑想と身辺記録です。

― 光に、捧ぐ ―

2013-03-10 23:20:33 | ブックス
「こんにちわッ、テディちゃでス!
 きょうはァ、あつくッてェ~」
「がるる!ぐるるがる~!」(←訳:虎です!明日は寒い~!)

 こんにちは、ネーさです。
 今年は気温乱高下の春、ですが、2年前の春は寒かったような気がします。
 本日の読書タイムは、
 2年前の、あの日に捧ぐ特別な一冊を御紹介いたしましょう。
 こちらを、どうぞ~!

  



 
           ―― 川瀬敏郎 一日一花 ――



 著者は川瀬敏郎(かわせ・としろう)さん、2012年12月に発行されました。
 『一日一花』と書いて『いちにちいっか』と読むこの御本は、
 新潮社とんぼの本ホームページに
 2011年6月22日から2012年6月30日まで連載された『一日一花』に
 加筆修正し、再構成したものです。

「おはなァ、でスかッ?」
「ぐるるがるるる!」(←訳:表紙もお花だね!)

 川瀬敏郎さんは、
 花人として知られる御方です。
 京都に生まれ、池坊の花道を学び、
 1970年代半ばからは流派に属さず、
 独自の創作活動を続けてきました。
 お花に関する御本も多く著しておられます。

 そうして花とともに歩んできた川瀬さんでしたが、
 震災の後、
 花を手にすることが出来ずにいたのだそうです。

 或る転機が訪れるまでは。

「むむゥ~? それはァ~?」
「がるるぐっるる?」(←訳:どんなきっかけ?)

 震災からひと月を経ての、TVのニュース画像の中。
 被災地にようやく遅い春が来、
 地に緑が芽吹き、花が咲こうとしていました。
 
 花を眺める、
 人々の無心の笑顔――

 その笑顔が、川瀬さんの心を動かしたのです。

「えがおォにィ、ふれてッ?」
「ぐるがる!」(←訳:一日一花!)

 御本の『あとがき』にはこう記されています。

   生者死者にかかわらず、
   毎日だれかのために、
   この国の『たましひの記憶』である花をたてまつり、
   届けたいと願って。

   あらゆる花を手向けたい――

 これが、なんともたいへんなことになりました。

「たいへんッ、でスかァ??」
「ぐるがるるる?」(←訳:どう大変なの?)

 川瀬さんの求める『あらゆる花』とは
 野に咲く花。
 温室で、遺伝子工学を駆使して合成された花ではないのです。

 『あとがき』には、
 一日一花に協力してくださった方々の名が挙げられています。
 身を挺して山野を走り回り花を届けてくれたという、
 川島南智子さん、藤井一男さんと壽子さん、森田美保子さん、
 撮影場所を提供してくれた木村宗慎さん、
 カメラマンの青木登さん、
 編集者の菅野康晴さん……

 川瀬さんと、多くの方々が力を注ぎ、
 かたちに成った『一日一花』。

「のにさくはなのォ、うつくしさッ!」
「がるるる!」(←訳:可憐です!)

 手を合わせるように
 一頁一頁を観、また読んでゆきながら、
 脳裏に浮かぶのは
 利休さんの言葉でしょうか。

   《花は野にあるように》

「あかいィはなッ、しろいィはなッ」
「ぐるがるるぐるる!」(←訳:空のように青い花!)

 3月11日の頁にあるのは、
 一枝の椿。

 その椿の名は『夢』。

 皆さま、どうか、ぜひ一読を。


コメント
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