喫茶 輪

コーヒーカップの耳

「アダチ君 年をとったら詩を書きたまえ」

2022-03-10 09:24:46 | 足立巻一先生
「補聴器」という足立巻一先生の詩を思い出している。
この本に載っている。
カバーも帯もなくなっていて、大いに傷んでいるが。


『足立巻一詩集・土曜美術社・1984年)。
それと『評伝 竹中郁』(理論社・1986年)の巻末には部分が載っている。

   「補聴器」
  竹中郁の通夜の折り
  故人の机の上に白い小鉢があって
  そのなかに金銅色の補聴器が一個。
  だが――。

  補聴器をかけた詩人を
  一度も見かけたことがなかった。
  わたしは戦争末期に火薬で鼓膜をやられ
  その厄介になってすでに久しいが。

  ある日
  わたしの補聴器がにわかに故障し
  竹中郁の卓上のそれを思いおこし
  とにかく拝借に出かけた。

  あれが大きらいでしたの。
  あんな不細工なものをかけられるか!って。
  そのくせ三つも持っておりました。
  どうぞどうぞ。

  わたしはもらった補聴器にTと大きく彫りこんだ。
  耳にあてると大声が聞こえる。
  ――アダチ君
    年をとったら詩を書きたまえ。


竹中郁への敬愛ぶりが感じられる詩である。
で、わたしだが、このところ詩を触っている。
これまでも詩の種のようなものはメモしてきているので、それを発芽させようと。
それで足立先生のこの詩を思い出したのだ。
コメント
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