アメリカの次期政権の人事が取り沙汰されているようです。果たして、アメリカは再生されるのでしょうか。
宮崎さんが取り上げてくれて今す。トランプさんであれば再生も可能性はありそうですが、ハリスではアメリカ終焉かも。
宮崎正弘の国際情勢解題」より 令和六年(2024年)8月22日(木曜日)
通巻第8375号 <前日発行>
トランプ次期政権の大統領補佐官に有力
ポッテンガー、コリンズ、ギャラガー等が取りざた
トランプ次期政権の閣僚にイーロン・マスクが前向である。
マスクはトランプと二時間に及んだ電話会談で「政権に協力する用意がある。国に奉仕したい」と述べ、政府機構の効率化に関心があると付け加えている。
つまり日本の「有識者会議」のように「行政機構効率化委員会」の委員長あたりなら月二回ほどのペースで奉仕できると言外に示唆している。ま、トランプ次期政権の目玉の一つだろう。(この稿はトランプ当選を前提に書いている)。
トランプ二次政権の閣僚は、国務、国防、財務、CIA、司法の五つの重要ポストに、クリントンやオバマのような人種比率配分型ではなく、能力重視、そして政策実現への協力姿勢と貢献度で決められるだろう。人種配分では政権が機能しないケースが起きるからだ。
とくにウォール街と軍需産業を代弁する共和党主流派のニッキー・ヘイリー元国連大使の処遇、またトランプ戦略と共鳴度が深かったマイク・ポンペオ前国務長官の復活があるか、どうか。
党内有力者、とくにマルコ・ルビオ、テッド・クルーズ議員や、下院中国問題委員長の座を去ったマイク・ギャラガー、フロリダのデサンティス知事などをどう処遇するか、現職のまま2028年待機組とするか。
さらに人事は各国大使にも及び、政権トップのおよそ四百名ほどが新顔となる。
次期トランプ政権の安全保障担当補佐官が誰になるかに焦点を当ててみよう。
トランプの唱えるMAGAは『アメリカ第一主義』であって、他国との戦争を避けるためにこそ世界一の軍隊が必要というのが基盤。そのうえで防衛は当該国 がそれなりの分担をする。NATOが激しく第一次トランプ政権と対立したのは、世界戦略ではなく、この費用分担をめぐる論争だった。
米国主導の戦争はしないとするトランプの心情は北朝鮮のキムとも三回も会談したし、ロシアのプーチンとも馬があった。この点でジョン・ボルトン補佐官とは意見が食い違い、ボルトンは政権を去った。ボルトンは日本人の拉致家族問題に関心が深かった。
ところがバイデンがはじめたくウクライナ戦争で、すっかり政治環境が変わりNATO諸国は嘗てのトランプへの反感は消えた。韓国にもそれなりの分担を求 め、台湾へは武器供与を続けるとしているが、直接関与に言及したことはない。バイデン政権の台湾政策はすでに十五次にわたった武器供与である。
▼ポッテンガーとコリンズ
現時点で有力とされる大統領安全保障担当補佐官の候補はマット・ポッテンガー(前大統領副補佐官)とエルドリッッジ・コリンズである。
とくにポッテンガーは「米中デカップリングは米国で反対もある議論だが、中国は自らが進めていることであり習近平は『経済成長』より覇権が優先している」としている。
ポッテンガーはウォールストリートジャーナルの北京支局に十年、中国語が流暢であり、その後、海兵隊に入隊した筋金入り。日本でも二年前に来日し講演会、テレビ討論などをこなした。
中国の理解は深く、「中国共産党と中国人民とは区別し、われわれは自由を望む中国人民の味方である」という考え方はポンペオ国務長官(当時)が2020年にニクソン・ライブラリーで行った講演の基調となった。
もうひとりの補佐官候補はエルドリッジ・コルビー(前国防次官補代理)である。
コルビーは台湾防衛に関しては最後まで曖昧とするのが賢明であって、トランプの本質にある考え方は孤立主義に近い。
コルビーや副大統領候補のJDバンスの考え方は「優先順位対応型」と解釈される。つまり他国の「小さな戦争」には極力介入しない(だからウクライナはさっさと停戦に持ち込む)。しかし『MAGA』とは米国覇権優先でもあるから中国との対決は辞せずとする考え方である。
この点で、次期補佐官に有力視されているマット・ポッテンガーやマイク・ギャラガーの考え方とは違いがある。ポッテンガーは、つい先日(8月19日)にも台湾を訪問し、頼清徳総統と会見したばかりだ。
80年代に主流だった「中国は経済的に豊かになれば民主化する」という甘い考え方は、中国の表層だけを観察してきたキッシンジャー等の地政学優先思考にもとづくアメリカの戦略だった。いまは、そのような考えを示す政治家は稀となった。
ところで、万一、ハリス政権が誕生すると仮定して恐怖のシナリオを描くと、安全保障担当補佐官に着く可能性がたかい一人がアンチ・イスラエル、イスラムテロを理解し、評価するフィリップ・ゴードンである。
ゴードンは22年3月に前任者マクエルダウニー補佐官辞任にともない副補佐官ポストから昇格した。ホワイトハウスに陣取る人物である。
前任のマクエルダウニーは外交官として31年のキャリア、駐ブルガリア大使や駐トルコ首席公使、駐アゼルバイジャン首席公使などを歴任した。
ゴードンはクリントン、オバマ政権にも仕えた。
▼アンチ・イスラエルが鮮明なフィリップ・ゴードンはハリス側近
ゴードンの持論は「イスラムのテロリストは自由を憎むがゆえに西側を攻撃するという考えは誤りだ」とする。ゴードンは「イスラムのテロリストは生まれなが らの悪人ではない。自由を憎んでいるのではなく、過去に偉大だったイスラム文明が『アラブ地域での新興国イスラエル』を含む他の文化に追い抜かれた状態を 『恥じている』のだ」という歴史観、文明論を展開する。
「アメリカは、アルカイダのテロリストを拘束し、米兵を処罰せず、イスラエルの軍事行動を正当化することで、イスラムのテロを生み出す状況を作り出して いる」。したがって「イランの懸念は正当であり、イランに軍事力を行使したり、国内の反対を煽ったりする意図はないと保証する必要がある」とした。
この考えはカマラ・ハリスの演説に投影されている。「バイデンは偉大であり、高い業績を上げた。その政策を引き継ぐ」と公言した、その舌の根も乾かぬうちに『バイデンのイスラエル支持は盲目的だ』と批判した。
在米ユダヤ人の多くは民主党支持だが、ハリスのイスラム寄りの姿勢に不安を隠せず「在米ユダヤ人の安全に関してハリスの言及がない」と問題視している(エルサレムポスト、8月20日)
ゴードンの考え方はオバマ政権の「イラン核合意」政策の青写真ともなった。イスラエル情報機関の見積もりでは、ゴードンが国務長官となる可能性もあるという。
ゴードンは、「ハマスは現在イスラエルを承認することを拒否しているが、その立場が最終的に変わることは想像に難くない。2014年には、PLOとハマスとの和解協定は「必ずしも悪いことではない」と主張した。
こうしてハリスのイスラエル批判は、周辺に陣取るオバマ政権以来の反イスラエル派の人物たちが目立つ。
8月20日の民主党大会で採択された政策要綱には中国への対応に言及し、こう言っている。
「中国による不正な経済慣行に立ちむかい、競争に打ち克つ。中国との経済的なデカップリング(分断)ではなく、経済関係の多様化などのデリスキング(リスク軽減)をはかる」
ハリスの副大統領候補に指名されたウォルツ知事は中国滞在経験と30回もの中国旅行に及んだ親中派であり、(ウォルツは中国語がかなりできるら強い)多くの学生を連れて行った。この点でウォルツを危険視する共和党は彼の軍歴も怪しいと言い出している。
トランプさんの復活でアメリカが妻子されることを期待していますが、果たしてどうなるでしょうか。
それにしても、アメリカは消滅を選ぶのでしょうか。それにしても、政治家って何をかんがえているのか。それを選ぶ有権者の責任でもあるのでしょう。