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柔らかい殻

2007年05月08日 11時33分00秒 | 洋画1981~1990年

 ◇柔らかい殻(1990年 イギリス 95分)

 原題/The Reflecting Skin

 監督・脚本/フィリップ・リドリー 音楽/ニック・ビキャット

 出演/ジェレミー・クーパー リンジー・ダンカン ヴィーゴ・モーテンセン シーラ・ムーア

 

 ◇1950年代アメリカ、アイダホ州

 誰でもそうなのかもしれないけど、子供の頃は、家のまわりは不思議に満ちていた。

 大きな屋敷には吸血鬼のような得体の知れない怪物が棲んでいて、なんでかわからないけど、そこには綺麗な女性も同居してるとおもったりしてた。

 舞台になってるアイダホ州の子供たちも、似たようなものだ。

 子供と大人は、たぶん、死に対する概念が違うんだろう。少年が納屋で発見する柔らかい殻に包まれた胎児のミイラは、ことによれば母親がかつて産み落とした少年の兄か弟だったかもしれないのに、少年はそれを天使だとおもい、ベッドの中で相談したりする。

 謎の未亡人は吸血鬼だと信じるし、被爆症だとおもわれる兄は吸血鬼によって生気を吸い取られると信じるし、つぎつぎに少年の子供たちを誘拐しては殺害してしまう若者を死神だと信じる。

 さらには、容疑者にされた父親がガソリン自殺をしたとき、その炎のゆらめきを美しいとさえ感じてしまう。

 死に対する概念が大人と違うからだ。

 それは『禁じられた遊び』の子供たちにも共通して言えるのかもしれないけど、ただ、若者の性の犠牲になったであろう未亡人の死に対して、尊敬してやまない兄の慟哭をまのあたりにしたとき、少年は柔らかい殻を破って、子供から大人へちょっぴり成長する。

 そんなふうに、ぼくはこの映画を捉えてるんだけど、もしかしたら、ちがうのかもしれない。

 それほど、この映画は難解だった。

 たしかに、映像は非常に美しいんだけど、余計な説明がなく、進行が緩慢な分、おもわず難解さを観ながら考えてしまう。監督のフィリップ・リドリーが、画家であり、かつ小説家でもあることが、よりいっそう、映画の設定や場面を難解にさせてるのかもしれないね。

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