◇ダイヤルM(1998年 アメリカ 108分)
原題/A Perfect Muder
監督/アンドリュー・デイヴィス 音楽 ジェームズ・ニュートン・ハワード
出演/マイケル・ダグラス グウィネス・パルトロウ ヴィゴ・モーテンセン ノヴェラ・ネルソン
◇リメイクというリスク
元作を上回らねばというのがリメイクの枷なんだけど、とってもよく健闘してる。
マイケル・ダグラスというおじさんを、ぼくはとっても好きだ。
下品なのか上品なのかよくわからないけど、もうとにかく野獣が上等な洋服を着てるっていう感じがあって、いっぱいお金を持ってるくせにいつも崖っぷちにいて、ちょっと足を滑らせれば一文無しになっちゃいそうな危うさがある。
まさしくこの映画の主人公なんだけど、奥さんのグウィネス・パルトロウが浮気してるってのを知れば、その遺産目当てに殺しちゃえばいいじゃんみたいな発想になるのも、いかにもマイケル・ダグラスらしい。
グウィネス・パルトロウって人は、なんだか知らないけど、欧米人に人気がある。
白人ってのは、セクシーな女の子が大好きなくせに、同時に、ちょっと痩せぎすで、知的で上品な雰囲気に憧れるらしく、こういう女優のひとりが彼女だとされるんだろうけど、今回は、もう少し知的さと上品さが欲しかったような気もしないではない。ともかく、こういうご婦人が不倫をするってのが、世の中年たちにはたまらない魅力なわけよね。
不倫相手が無名の画家ってのもまた定番といえば定番だけど、どうしても貧乏の代名詞といえば、芸術家か文士だ。
それに、上流階級のご婦人は、たいてい、こういう野郎に溺れる。マイケル・ダグラス物にしては外連味が乏しいもしないではないけど、この奥さんを殺してくれたら50万ドルやるって画家に持ちかけるのは、いやまあ、いかにもマイケル・ダグラスらしくていい。
そういう意味では、ヒッチコックのオリジナル(原案フレデリック・ノット)をよく消化してるんじゃないかしら。