◎日本の熱い日々 謀殺・下山事件(1981年 日本)
監督/熊井啓 音楽/佐藤勝
出演/仲代達矢 山本圭 井川比佐志 平幹二朗 浅茅陽子 中谷一郎 岩崎加根子
◎追悼・熊井啓
活字嫌いのぼくにはまったく珍しいことなんだけど、この原作本、矢田喜美雄『謀殺 下山事件』がいまだに本棚にある。
大学時代に読んだんだよね。でも、活字が頭に入ってこないぼくは、読むのにずいぶんと苦労した。そんな記憶しかない。
記憶といえば、たしか、渋谷東映がまだ二階建てで、映画館だけだった頃、地下の「渋谷東映地下」で、この作品を観たような覚えがある。それと、当時、なにかの仕事で知り合いになった女性が、脚本を書いた菊島隆三の教え子だかなんだかで、ちょうどぼくがこの映画を観たばかりだったものだから、
「あれはおもしろかったね~」
っていう話をしたような気がする。
でも、それが記憶のすべてで、どこでどんなふうに話したのかも覚えていない。
人の記憶ってのはそんなもんで、国鉄の下山総裁の事件に関係した人間やそれを調べてた人間もまた、肝心なところは忘れないにしても前後の記憶は曖昧になっていくものだ。
昭和、それも戦後の混沌期は、いろんな事件がほうぼうであった。そのさまざまな事件について、記憶や記録を持っている人間は、やっぱり早い内に文章にしておいた方がいいんじゃないのかな。
まあ、それはそれとして、スタッフもそうなんだけど、役者の人達もみんな若くて、ぎらぎらしてる。好い時代だな~とかっておもうわ。
狙いの白黒画面は、異様な迫力があるしね。
ただ、ちょっとばかり、おもな登場人物の皆さんは、自己陶酔した雰囲気がありすぎな気もしないではない。
それと、他殺説をとる演出が社会派すぎるきらいもあるかな~。
ま、どちらも持ち味なんだから、ぼくがなんかいう立場でもないか。