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▽=☆

Undo

2007年05月20日 01時04分35秒 | 邦画1991~2000年

 ▽Undo(1994年 日本 47分)

 原作・脚本・監督/岩井俊二 音楽/REMEDIOS

 出演/山口智子 豊川悦司 田口トモロヲ

 

 ▽強迫性緊縛症候群

 そんな病気があるのかどうか知らないけど、もしも、Mっ気の強い人間、あるいは緊縛願望を持っている人間がいれば、まあ、そうなる。

 ただ、亀を縛ったり、本を縛ったり、家中の本を縛ったりする行為は、まぎれもなく、緊縛したくてもできずに悶々としている人間の病症だろう。

 ところが、山口智子は、夫の豊川悦司に対して、

「わたしを縛って」

 といってくる。

 これはつまり、

「夫に日常生活の何から何まで拘束されたい」

 という願望が爆裂したものと解釈でき、結果、夫は妻を縛る。

 となると、だ。

 この場合の山口智子は、緊縛されたい人間の病症を発露されたことになり、あきらかに、緊縛したいのではなく緊縛されたい人間ということになる。つまり、精神科医の田口トモロヲの診断はちょっと間違ってるわけだよね。

 だとしたら、物語の根本を勘違いしてることにならないかしら?

 妻は夫の前から消えちゃうけど、その後、どうなったんだろう?

 彼女の病気が、夫にだけ縛られたいのか、誰でもいいから自分を縛ってほしいのか、ということで変わってくるかもしれないけど、もしも前者だとすれば失踪する理由がなくなっちゃうから、おそらく後者ではないかと考えれば、彼女はSM映画に出るか、SM倶樂部に入るか、その気のある男を探すか、そういう行動に走ってゆくとしか考えられない。

 ただな~、強迫緊縛症ってのはいかにもありそうでなさそうな病気で、とくに、そこに性衝動が介在してない分、なんだか嘘っぽい。これだったら、SMポルノの方が数倍、人間の情念や物狂いを語っているような気がしちゃうのは、ぼくだけ?

 少なくとも、この映画の緊縛に美しさは感じられないし、狂気の度合いも小さな感じがするし、はっきりいって物足りないし、要するにつまないんだけど、どうなんだろね。

 一度、浦戸宏師匠にでも聞いてみたいもんだわ。

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