▽Undo(1994年 日本 47分)
原作・脚本・監督/岩井俊二 音楽/REMEDIOS
出演/山口智子 豊川悦司 田口トモロヲ
▽強迫性緊縛症候群
そんな病気があるのかどうか知らないけど、もしも、Mっ気の強い人間、あるいは緊縛願望を持っている人間がいれば、まあ、そうなる。
ただ、亀を縛ったり、本を縛ったり、家中の本を縛ったりする行為は、まぎれもなく、緊縛したくてもできずに悶々としている人間の病症だろう。
ところが、山口智子は、夫の豊川悦司に対して、
「わたしを縛って」
といってくる。
これはつまり、
「夫に日常生活の何から何まで拘束されたい」
という願望が爆裂したものと解釈でき、結果、夫は妻を縛る。
となると、だ。
この場合の山口智子は、緊縛されたい人間の病症を発露されたことになり、あきらかに、緊縛したいのではなく緊縛されたい人間ということになる。つまり、精神科医の田口トモロヲの診断はちょっと間違ってるわけだよね。
だとしたら、物語の根本を勘違いしてることにならないかしら?
妻は夫の前から消えちゃうけど、その後、どうなったんだろう?
彼女の病気が、夫にだけ縛られたいのか、誰でもいいから自分を縛ってほしいのか、ということで変わってくるかもしれないけど、もしも前者だとすれば失踪する理由がなくなっちゃうから、おそらく後者ではないかと考えれば、彼女はSM映画に出るか、SM倶樂部に入るか、その気のある男を探すか、そういう行動に走ってゆくとしか考えられない。
ただな~、強迫緊縛症ってのはいかにもありそうでなさそうな病気で、とくに、そこに性衝動が介在してない分、なんだか嘘っぽい。これだったら、SMポルノの方が数倍、人間の情念や物狂いを語っているような気がしちゃうのは、ぼくだけ?
少なくとも、この映画の緊縛に美しさは感じられないし、狂気の度合いも小さな感じがするし、はっきりいって物足りないし、要するにつまないんだけど、どうなんだろね。
一度、浦戸宏師匠にでも聞いてみたいもんだわ。