◇宮本武蔵(1954年 日本 94分)
英題/Samurai I: Musashi Miyamoto
監督/稲垣浩 音楽/団伊玖磨
出演/三船敏郎 三國連太郎 八千草薫 岡田茉莉子 小沢栄太郎 加東大介
◇稲垣・三船版、3部作の1
たしかに、アカデミー外国語映画賞特別賞を受賞した記念すべき作品なんだけど、なんだか、三船敏郎がかわいそうになっちゃったような気がするのは、ぼくだけ?
イーストマンカラーはこの時代の流行なんで仕方ないんだけど、とってつけたような色彩な感じがして。とはいえ、富士フィルムの東映の錦之助版の色も似たような感じだけどね。
あ、ちなみに錦之助の武蔵はとっても好きで、求道的な人間を演じするのは三船さんはあんまり得意じゃないのかも。そういうことからいうと、武蔵はちょっと似合ってない気がしないでもない。
襤褸を纏って吼えているのは好いんだけどな~。殻に押し込めてしまうっていうか、時代的の様式に合わせようとすると、かえって大人しくなっちゃうんだよね。稲垣浩はどうしても綺麗な演技と立ち回りの美しさを考えちゃうんで、そういうところが三船さんの場合は、裏目に出ることがある。
『風林火山』と『宮本武蔵』の差はそのあたりにあるんじゃないだろうか。
一方で、八千草さんのお通は適役だとおもうんだけどね。ただ、すこしばかり気の強さが出すぎるきらいはある。入江若葉さんのような初々しさやなよなよした女々しさはないから、どっちがいいかっていうのは、もはや、趣味の領域だわ。
三國連太郎の又八は、木村功の又八よりも好い感じだけど、三國さんの場合、吐夢版の沢庵が適役だったから、なんともいえない。
てなことを観てくると、これだけ映画化されすぎた宮本武蔵は、どうしても役者や演出をくらべちゃう。中身は、とくに第一部は筋立てがほとんどおんなじだから、余計そうなる。時代っていうんだろうか、東宝も東映も日活も、みんな、映画化した。だから監督や役者で見分けるしかない。
いずれにせよ、好い時代だったんだろうな~。