◇風とライオン(1975年 アメリカ 119分)
原題 The Wind and the Lion
監督・脚本 ジョン・ミリアス
◇風はルーズベルト、ライオンはライズリ
1904年に実際に起こった遊牧民族ベルベル人のリフ族の族長による在モロッコの米国人誘拐事件がモデルになってるらしい。で、ベルベル人とアメリカとの間にごたごたがあり、誘拐されたペデカリス氏は生還したとかって話なんだけど、映画ではその紳士が夫人に置き換えられて、キャンディス・バーゲンが演じてる。族長のライズリはもちろんショーン・コネリーだ。
この映画が封切られた当時、ぼくはまだ高校生で、実をいえばこの映画を初めて観たのはテレビだったんじゃないかな?たぶん、大学のときだったとおもうんだよね。だって封切られたときはぼくの住んでた田舎町まで降りてこなかったし、ということはつまりそれほど大ヒットしたわけじゃないんじゃないかっておもうんだよね。でも、ぼくがこの作品を観るのを楽しみにしていたのは、なんといってもジョン・ミリアスが監督だったからだ。
あの頃、ぼくは妙にミリアスに親近感があった。黒澤明を信奉しているってところがとっても好きで、コッポラやルーカスの仲間だって印象が強かったから、なおさらだった。そんなこともあって、この『アラビアのロレンス』のモロッコ版みたいな作品にはずいぶんと入れ込んでいたんだけど、やっぱりっていうか、恐れていたとおりっていうか、なんだか雑な仕上がりだな~とおもった。
でも、それは当時のことで、今あらためて観直すとその荒々しさもわざとだったのかもしれないね、だってベルベル人の人生や誇りみたいなものを表現するには、きわめて野蛮な印象を観ている者に与えるには荒々しい演出と編集と絵づくりが必要なんだって、ミリアスはおもったかもしれないなって気がするからだ。
いずれにせよ、誘拐される貴婦人という気丈な役どころはキャンディス・バーゲンはよく演じてたし、ショーン・コネリーもまた粗暴ながらもイギリスやフランスの介入を上手に利用してモロッコとその族長を守っていこうとする矜持をちゃんと表現できていたかもしれないなっておもうんだよね。