☆陽だまりハウスでマラソンを(2013年 ドイツ 105分)
原題 Sein letztes Rennen
監督・脚本 キリアン・リートホーフ
☆78歳にしてベルリンマラソンに挑戦
それだけの映画なんだけど、これが上手に撮れてるんだ。
1956年のメルボルン五輪マラソン競技で金メダルを獲得したんだけどもはや伝説というよりも忘れ去れた観のある爺さんの話で、老人ホームに入居させられながらも一念発起してベルリンマラソンに出ると決め、決死のいきおいで練習していくところが物語の核になってる。もちろん、本番のマラソンが佳境なのは当たり前なんだけど、それまでにまあいろいろとある。
ドイツの喜劇俳優ディーター・ハラーフォルデンがまたいい。人間、年を食えば食うほど味が出るもので、この人も例外じゃない。病気の奥さんに助手をさせても、老人ホームの縛りから脱するべく走るわけだけれども、つまり、他人に束縛されることの辛さは堪えがたいという意識が、かれをして走らせるんだね。こういう気持ちはよくわかるし、老人ホームについてまわる自由なき束縛観の打破、あるいは過去の栄光や名誉などすぐに忘れ去られてしまう辛さ、さらには人間らしく老いて初めて人生の充実があるのだという主題は、ぼくは好きだな。