△男はつらいよ フーテンの寅(1970年 日本 90分)
監督/森崎東 音楽/山本直純
出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 森川信 新珠三千代 香川美子
△第3作 1970年1月15日
出だしに、悠木千帆こと樹木希林が出てる。それも渥美清とツーショットのやりとりだ。へ~。そういう時代か~。
つね、梅太郎、竜造、源吉、みんな名前でタイトルに出てるわ。佐藤峨次郎、店員で台詞もあって、なんだかまともだ。ていうか、竜造が「とらさん」と話しかけるのは森川信のときだけなんだろうか。
え、ワイプ使ってるわ。演技の切れもいいし、なんだか落語みたいだ。やっぱり、森崎東だね。
けど、ジャケット、土色と黒色の千鳥格子ってのは濃すぎる気もしないではない。それと、寅がひろしとけんかになって「表に出ろ、ほんとになぐるぞ」となり、喧嘩して組伏せられ、涙を流して負け惜しみまでいうんだ、若いね。
しかし、涙で滲んだ目線のカットから霧にけぶった江戸川の川面に続いて、倍賞千恵子のアップがフレームインだ。いいな、このカットつなぎ。とくにこの作品の倍賞千恵子の初カットだからね。
てか寅、トレンチコートまで羽織ってるぞ。この時期までは服装も定番だけってわけじゃなかったのね。ま、衣裳はともかく、いつものとおり、寅はインテリに負けてふられるという展開はこのあたりから定番化する。そう、たとえば、ここでいう大学教授だね。
歯磨きしながらようやく気がついて口をゆすいだ水をごくりと飲んで「それじゃあその馬鹿というのは」と寅がつぶやいたとき、絶妙なタイミングで「そうよ、馬鹿はおまえよ」という左卜全が、つっこみをいれる。うまい。さらに、勘違いして障子の向こうにいる左卜全たちに寅が告白かたがた別れの挨拶をするわけだけど、ふむ、シラノ・ド・ベルジュラックね。
で、すれちがったあと、立ち小便してる寅には声をかけずそのまんまベンツで走り去る新珠三千代と、歌を歌って去っていく寅。もしかしたら、この別れの場面は寅の別れの中ではいちばん好みかもしれない。
ラストが年越し蕎麦というのも、最初で最後じゃなかったかな。しかも、寅が白黒テレビの向こうからご挨拶というのも、最初で最後なんじゃないかしら。子供が3人いると嘯くのもね。ま、それはそれとして、お志津~!といったときに、新珠三千代の新居でカラーテレビをかけっぱなしで、でも観てないってのも、わかるね。
ま、だからといって「おまえのけつはくそだらけ」っていう観光客の合唱で終わるのは、実に品がないな。