▽新・男はつらいよ(1970年 日本 92分)
監督/小林俊一 音楽/山本直純
出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 財津一郎 栗原小巻
▽第4作 1970年2月27日
やけに品がないな~とおもい、なんともテレビ的な展開じゃないかともおもって、それでも我慢して観てたんだけど、あまりのみっともなさに徐々に観るのが辛くなってきた。
そもそも、寅が競馬でぼろ儲けするっていう展開はどうかな?なんだか違うんじゃないか?とおもってたら、なんのことはない、その金でハワイに行こうとしたら旅行会社の社長に盗まれるって展開のための設定だった。でも、別にそれは寅のせいでもなんでもないし、旅行に出たふりをしなくちゃいけないことはまるでない。
にもかかわらず、財津一郎の泥棒騒ぎもふくむてもうわけのわからない展開だ。
いくらなんでも、これはないだろ。
ただまあ、騒ぎが終わってからの不器用な優しさと頑固な辛さのぶつかり合いは、いかにも山田洋次調でようやく寅に戻ったって感じだった。とおもったのも束の間、またもや、あまりにもテレビ的な簑をかぶった展開だ。悲しくなってきたわ。
てか、この回も「おいちゃん」じゃなくて「おじちゃん」なのね。寅も「寅っ」じゃなくて「寅さん」って呼ばれるのね。まあ、森川信の場合はそれでいいのかもしれないけど。
しかし、この回もまだ、労働者諸君は『スイカの名産地』を歌い続けてるんだな。いや、まじでいつまでこれだったんだろう。住み込みの工員の窓をふさいだ展開も、笠智衆の呆れ顔も、寅の『春がきた』もすべてが辛いな。
そりゃまあ、栗原小巻の置かれてる相容れない父親との死に別れという環境との対比もあるんだろうけど、それで、寅の父親の命日を忘れるという展開に持っていくことで小巻の頑なな気持ちがほぐれていくというのはわからないでもないけど、なんというのかな、山田洋次の書いてる部分とそうでない部分とがわかりすぎる気がして、このちぐはぐな脚本と演出は辛すぎるな、やっぱり。
しかし、この時代はミニスカートなんだね。栗原小巻のミニとか初めて見る気がするけど、それは当時の映画を忘れてるだけなんだろう。それにしても、若いな、みんな。
あ、この回も、さくらの出番はほとんどないんだね。ふられて旅に戻るのを聞くのもおいちゃんとおばちゃんの役目なんだね。
ただ、寅が胸の内を告げて出て行こうとしたときかぜの冷たさに悩んだとき、おもわずおいちゃんとおばちゃんの話を聞いてしまう寅と、去ったあとの自転車の後輪の回転する演出だけはよかった。ここのところだけは、脚本の勝利だな。