▽男はつらいよ 純情篇(1971年 日本 91分)
監督/山田洋次 音楽/山本直純
出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 ミヤコ蝶々 田中邦衛 榊原るみ
▽第7作 1971年4月28日
集団就職の乗り込んだ列車を見送るひと幕で、まあお決まりの「あ、おれもあの列車に乗るんだった」ていう展開でタイトルなんだけど、森川信のタイトルはこの回は「おじちゃん」なのね。
しかし、みんな、若いな。おいちゃんが「表へ出ろっ」と叫んで、さくらまでもが寅を怒鳴りつけてる。その若さが、帝国ホテルの615号室の湯船を「でけえ金隠しだな」とかいっておしっこしちゃったりするんだね。くわえて「脳が足りねえとはなんだ、その脳の足りねえ息子を産んだのはどこの女だ?」で始まるミヤコ蝶々との親子喧嘩も若さの故なんだろう。
けど、この頃になってようやく、さくらも大人になってきた観がある。スーツの似合うしとやかなご婦人になったわ。
でも、そうか。朝日印刷の労働者諸君や榊原るみ演じる知恵遅れの青森出の娘の交番を覗く若者らのカットを見てると、なるほど、都会に翻弄される若者が主題なのか。いかにも当時の主題だなあ。
いや、そんなことより、榊原るみだ。この頃はまだちょっぴり太ってて田舎娘の野暮ったさが満載だけど、そんなことはどうでもいい。可愛いな~。じつに、可愛い。当時、この可憐な女優さんは、お嫁さんにしたい女優とかいうランキングはなかったものの、それをしたらだんとつでいちばんだったんじゃないかって気がする。
まあそれはさておき、残酷な回だな。寅がさくらを殴り飛ばして旅に出るのは初めてなんだろうけど、でも「足りねえやつと足りねえやつが結婚するのはだめだ」っていう寅の考えはあかんのじゃないかしら。あ、でも、青森へ向かったとおぼしき寅がなにをしでかすかわからず、その心配が高じてさくらが青森県のとどろきまで出向くという展開は、これまで観たことがない。
あ~有名な海辺の無人駅か。冒頭とおなじくディスカバー・ジャパンのポスターが貼ってあるし、この時代なんだね。
田中邦さんも若いな。とんでもない、とんでもないって台詞の連発だけど、好い感じだ。
まあ、この回はミヤコ蝶々も出てたりする分、寅がらみの余分な連中も見当たらないし、ラスト、バスの中で再会するのもあったりして、ちゃんと寅とさくらの物語になってるのも珍しいかな。でも、これでいい気がする。このシリーズでマドンナとか呼ばれる人たちはいってみればお飾りな感があって、ほんとのヒロインはさくらなんだから。