既に廃刊になった雑誌にカメラ毎日があった。高校の頃、立木義浩さんや森山大道さんをはじめとするフォトグラファー達が駆け出しの頃の気力ある刺激的な感性と被写体で誌面は埋め尽くされていた。そんな若い頃の記憶もあり先日ジュンク堂で、まだこんな雑誌があるんだと思ってアサヒカメラ2月号を買って夜更けに読んでいた。
カメラ雑誌だから読者の画像投稿欄がある。カラープリントのセクションで20人の入選作品が掲載され、年齢が書いてあったから自然に指が動いたのだが、年齢を表記したのが15人、その平均年齢が67歳、過半の70歳代が8人もいて最高齢は79歳だったという数字に、間違ったゴメン、アート系の雑誌と勘違いして老人倶楽部の雑誌を買っちゃったよと思った。
それにしても79歳でニコンD500とか、EOS5Dだとか、随分重たい撮影機材を使用している。年寄りの冷や水とからかいたくなるが不思議な現象だ。というのも重たければiPhoneにするとか方法はあるだろうに。えてして年寄りが身を寄せる世界というのは、いずれなくなる世界なのだろう。つまり重たい撮影機材も雑誌も・・・。
この雑誌は特集記事が鉄道と風景となっており、1日に数本も来ない列車を終日待ち続けるなんて鉄道フォトグラファー達は随分辛抱強いと思われた。
鉄道写真といえばその第一人者の一人広田尚敬さんの激しく動く流し撮りの蒸気機関車の画像がつとに有名だが、もう一人あげるとすれば堀越康夫さんの「石北本線生田原その1〜6」と題する一連の画像がWEBにアップされている。終日生田原駅をポジションに撮影した氷点下25°の雪の常紋峠をゆきかう蒸気機関車の画像だ。峠を越すために補機を後ろに付けるという作業が淡々と行われてゆく。そのなかで生田原駅から乗る朝の乗客が結構おり、それは人口が全国に分散していた時代の活気ある町の姿を写し撮ったものである。今、生田原も無人駅となり、Google mapでみても地場産業の林業も振るっていないのだろうか、閑散としかっての鉄道ヤードの姿は皆無だ。
堀越さんの画像をみるにつけ、かっては地方もこんなに元気だったのに今は無人駅という現象をみていると、戦後日本の人口構造が地方から都市へと集中してきたことによって、それまで全国的に人口が平準化していた国土が大いに偏ってきた大きな変化を示している。人が流れても町は残っている。それもものすごく活気がない寂れた状態で。いずれは町も捨てられてゆくのだろうか。
先日の人口動態調査結果では、東京への一極集中がさらに進んだことが発表されていた。それだけ地方の過疎化は加速し、今では地方都市の人口が減少している。それは地域活性化に励む努力も空しく陽落ちる国なのか?。今の日本に、未来が感じられなくなって随分時間が過ぎた。
ジュンク堂で建築関係の書庫が1列減っていた。1列と言うことは11連の本棚が2列分である。幸い私の本は置いてあったが、もはや建築自体も生命力がなくなりつつあるのか?。先の重たい機材をかつぐ老人達のように・・・。
堀越康夫 蒸気機関車がいた時代
http://locomotivesteam.web.fc2.com/index.htm
クロッキー帳NO33.2017.05.24