Creator's Blog,record of the Designer's thinking

フィールドワークの映像、ドローイングとマーケティング手法を用いた小説、エッセイで、撮り、描き、書いてます。

ドローイング157. 言葉の海を渡る舟

2018年02月02日 | drawing

 1月30日の夜、映画版「舟を編む」2013年、のビデオを2回みてしまった。広辞苑などの大きな国語辞書の編集を骨格としたストーリーだった。もちろんキャストがいいよなという映画の話もあるが、辞書づくり10年という話はアカデミックの人間なら誰でも知っているから余計に興味深かった。

 だから辞書は大切にしており、私もこれまでに本棚2連ぐらいの辞書はあったし、そのうちの半分は大学を退職するときに図書館に寄贈したが、いまでも主流な辞書は手元にある。一番大きいのは小学館:日本国語大辞典(縮小版)全10巻だろう。これって一体編集に何年かかったのだろう。現在はこれを簡略ベースとしてデジタル版も出されている。

 デジタル版で大変便利だったのが小学館:ランダムハウス英和大辞典であった。それは検索機能や例文がついており、また容易に検索できる類義語が表示された。これは図書版にはない使いやすさだったし、私の仕事であるコンセプトをつくるときには大いに力を発揮した。いまそれはgooの辞書にもなっているが、例文や類義語検索がない上に、広告が鬱陶しいので、アカデミストやコンセプトクリエイターにとっては使えない。だからこのデジタル版がなくなったときからコンセプトワークが停滞した。もう一度デジタル版、それもWEBダウンロードで欲しいのだが、そんなビジネスはしていないようだ。小学館も人類の知見を安くgooに売り飛ばしてくれた。

 私の仕事であるコンセプトワークは、ある種精神的な孕み(はらみ)なのである。そうした頭の中に隠れている知の孕みが表へ言葉として表れるから、それをコンセプトとしているわけだ。そういうことはランダムハウスデジタル版では容易にでてくるのだが、WEB辞書のweblioでは即物的な意味しかない。そこでconceptionを開くとようやく該当する意味が登場し妊娠、受胎と説明されている。それはまことに体系的画面構成なのだが、そんなのはconceptの画面で関係性を一覧したいのだがWEB辞書は面倒なのよね。

 それにしてもこんな広告の多い煩わしい辞書画面で高校生は勉強しているのか。同一画面にTOYOTA AQUAアップグレードなんていう広告の隣で。ならコンドームと入れたら製造企業の広告がでるのか。やったけどでなかった。まあ高校生達は、そうした攪乱要因ばかりの画面の中で興味ある広告が混ざっても無視して勉強に集中できる能力があるんだろうな。そりゃ新人類だわ。

 でつ、確かに辞書は、大きな言葉の海を渡る舟なんだということを再認識させられたわけです。あの指に吸い付く紙の感覚は捨てがたいものがある。

 映画の話になるけど、もちろんキャスティングがとてもよかったけど、細心な神経の地味な編集者と奥さんが気っぷのよい板前さんという性格の対照的なカップルの組み合わせっていいなと思っていた。事務系サラリーマン同士のカップルなんて実に事務的世界ばかりでつまらん組み合わせだと思っていたからなのだけど。もし一人もんですと相談されたら、将来自立できる板前さん見習いの彼女がお勧め!、って絶対いっちゃうけどな・・・。

追記:京都の2月4日の天気予報は、雪から曇りのち晴れに変わってしまいました。そのかわり今日が雪予報(都心は風花程度かな?)とか。寒いですが相変わらず雪の降らない京都です。

 

クロッキー帳NO33.2017/06/21

 

 

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