3月の気だるい午後、美希姉ちゃんからメールがきた。
美希「卒業制作の短編映画をつくった。見に来ませんか?。」だって・・・。
もう映像の専門学校を卒業か・・・。
いつものナンタルのハーバーが見えるカフェに出かけた。
美希姉ちゃんと直人君がいる。
少し前の光景だけど懐かしい。
美希「これ!」
そういって借り物のiPadを開いてくれた。
「何々!、美貴と三樹、ラブストーリーだね」
そう思って10分の短編映画を見ていた。
彼氏がいる美貴と彼女がいる三樹が酒場で意気投合し彼女の家でセックスをする。そんな二人の関係が意外に意気投合してゆくラブストーリーか。」
「こういうのは先が読めるよな。最後に二人は別れるんだよ。あのとき呼び止めておけば良かったと後悔しながらさ・・・。」
美希「ハハハッ!。」
そういって最後に、やっぱ別れのシーンか・・、それで彼氏は歩道橋の上から彼女の後ろ姿を見送る場面か。うん!、そのとき彼氏が突然「俺たち結婚しよう!!」と大声で叫ぶ。すると彼女は駆け足で戻ってくる。そして次のカットは彼女が妊娠して大きなお腹を抱えているシーンで終わる。
「へーーっ、最後はあの土壇場の一声で人生が決まるんだ。」
美希「先生が、『最後は別れたほうがこの手の映画としては今風ですけどねぇー』と講評された。」
「人間がおいこまれて、最後の場面で発する土壇場の一声が叫べるどうかを問うているわけだ。」
直人「狙いはそこでしょうね。私撮影に全部付き合わされましたもん。」
「あら!、この俳優さんはどうしたの。だって妊娠してお腹だして・・、なんかお腹が動いているよ。これって胎動だよね。このカットと恋人のカットと同じ俳優さんだよね。2年間撮り続けたのかなぁー?」
美希「(*^▽^*)同一人物ですー・・・」
直人「時間なんかかけていないです。撮影期間1ヶ月です。」
美希「私がマタニティーフォトをやってるでしょ。この依頼夫婦が主人公なんです。でっ出産直前に撮影して、その後に若作りのメイクしてラブラブ時代の撮影をしたんです。」
直人「つまり時間を前後逆にしたんです。酒場のシーンなんか産後の宴会をしようっていうので呼び出して、美希が撮影して、私が赤ん坊をだっこしていましたから(*^▽^*)」
「うーーん、人間は追い込まれて発する最後の一声に真実ありか・・・。それで社会に出たらどうすんの?。」
美希「小さな映像のオフィスに勤めることにしたの。YouTubeの映像制作がメインなんだって。そんで直人を食べさせて、まるでお母さん役だよね(*^▽^*)。」
「お母さん役で短編映画が撮れそうだな。」
(*^▽^*)
・・・
そんな築港のカフェで冬の終わりを感じていた小樽であった。