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現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

(23) 遍路みち

2008-08-21 13:17:11 | H20./8月 四国の旅
所どころに「遍路みち」というのがある。
人一人やっと通れる細い畦道もあった。

夏場は遍路さんも少ないらしい。数人しか
見かけなかった。遍路みちも草が生い茂り、
枯れ草で覆われていて、「マムシ注意」の
立て札もある。なるほど、金剛杖は こんな
時に役に立つのかと思った。虚無僧の私は
尺八をブーブー吹きならして 無事 通った。

上から蜘蛛や毛虫も。こんな時でも天蓋は
超便利。怖いもの無し。
歩き遍路は、靴にもあれこれこだわり、それ
でもマメができて困るそうだが、足袋に草履
で十分。履きなれているせいかマメもできな
かった。

切り通しになった山路で、羽黒トンボが無数に
乱舞していた。私の周りをまつわりつくように
飛ぶ。道先案内をしてくれているような、死者
の霊が呼んでいるような怪しげな動きに しばし
見とれた。

(22) 虚無僧装束

2008-08-21 07:11:21 | H20./8月 四国の旅
虚無僧装束は、旅をするのに 実に利に適っている。

天蓋(てんがい)は 日除けになる。それで結構
風通し良く 涼しい。手甲、脚絆も、日焼け対策、
蚊や蜂対策にもなって良い。

猛暑の中歩くと 下着は グジョグジョ。脱ぐのも
ひと苦労。それで列車に乗ると、冷えて気持が
悪い。下着のシャツもパンツ(ブリーフ)も、3日
目に、宅急便で家に送り返した。

晒しの布が二本あれば十分だった。ふんどしにして、
交替に洗って、コンクリートや金属製のベンチの
上などに置けば すぐ乾く。この間 一休み。腰から
ぶら下げていても乾く。パンツでは ぶら下げて
歩くわけに いかないだろう。(着物が透けるので
褌の上にステテコは 履いている)

テトロン混紡の着物と襦袢も、すぐ乾く。着物の袖
はポケット代わりになって、小銭入れやメモ帖など
を 入れておける。

日 一日と 明け方は涼しくなってきた。襦袢のまま
で寝るが、涼しくなってきたら 着物を掛けて 寝る。

帯も便利。布袋を提げることができる。
袋の中は、髭剃りと紐にカッターナイフなど。
紐は、草履の鼻緒が切れた時の応急措置用。

偈箱(げばこ)は、財布や虚無僧免許証など貴重品入れ。
寝る時は、枕にして寝る。

歩き遍路の人たちは、15kmほどの荷物を背負って、
汗びっしよりになって歩いている。顔も真っ黒に日焼け。
虚無僧は、暑い中でも爽やか、涼を呼ぶ恰好なのだ。

(21) トイレ

2008-08-21 04:40:27 | H20./8月 四国の旅
「タキノートイレがあります。どなたでもご利用ください」
のアナウンス。「滝の音入れ」?。滝のようにジャージャー
音が流れるのか?と一瞬思った。「多機能トイレ」である。
今は、駅、公共施設、公園でも たいてい在る。身障者だけ
でなく「どなたでもご利用ください」とあるので、気楽に
使わせてもらっている。着替えに 髭剃りに と助かる。

内子と宇和島の中間、大洲駅だったか、特急通過待ちで
5分停車。「トイレを利用されたい方は、こちらで」の
車内アナウンス。駅舎は朽ち掛けた小さな小屋なのに、
トイレは 多機能トイレが二つで、駅舎より大きく立派
だった。長距離バスの乗客も利用するから らしい。

快速にもたいていトイレは付いている。しかし すごく
揺れる。各駅停車で長時間となると、トイレが困る。
乗り継ぎが、結構すぐなので、行く時間はない。


⑳宿泊

2008-08-21 04:07:28 | H20./8月 四国の旅
6泊7日中、ホテルは一泊。あとは野宿。

8/10 (徳島)板東駅 無人駅で周囲は真っ暗。 
   木造の小さな駅舎のベンチに、きれいな座布団が
   二つ置かれていた。0:30過ぎると、照明が一つだけに。
   そこへ、油蝉が3匹も飛んできて、20秒置きに騒ぐので、
   うるさくて眠れず、参った。
   深夜2時、パトロールの巡査が2人 のぞいていった。
   明け方4時頃ようやく熟睡したら、すぐ5時には
   人がはいってきて ビックリ飛び起きる。
   
8/11 鴨の湯で、ひと風呂浴びる。歩き遍路は370円と安い。
   無料の遍路宿が併設されているが、3畳の小屋が二つ。
   そこへ7人。外人の女性2人、日本人の若い女性1人。
   私は外のベンチで寝る。不思議と蚊がいない。

8/12 松山駅前のビジネスホテル、モンブラン。一泊3,700円。
   和室でトイレ、風呂は無し。寝れればいいので、十分。
   全自動洗濯機200円で、着物も下着も 全部 丸洗い。

8/13 宇和島駅。駅舎はきれいだが、深夜は締め出される。
   駅前のバス停のベンチで寝る。蚊がいない。

8/14 高知、浦戸湾の五台山に向かう長い橋の上。途中に
   石作りのベンチがあり、そこで寝る。海の臭いがしない。
   深夜2時、若い女性がコツコツと 近づいてきて
   通り過ぎて行った。こんな夜更けに??幽霊? 夢見心地。

8/15 滋賀県長浜駅。駅舎は新しく、2階建て。一階の待合室
   は 戸がなく、ベンチで寝る。お咎めなし。


      

⑲食事

2008-08-21 03:22:38 | H20./8月 四国の旅
虚無僧に出ると、全く お腹が空かない。
普段から 一日一食にしている。オウム
信者も 一日一食 だそうだ。「一日三度
食べなきゃ」 という 慣習、思い込み、
こだわりを捨てれば、これが当たり前に
なる。

今回、3人の方からご馳走になった。
これも旅の楽しみであり、感謝である。
こうしてご馳走をいただいた後は、パン
一つで十分なのだ。

6泊7日中、3日がご馳走になり、3日は
パン一つ、1日は何も食べなかったこと
になる。

祖谷で、大きな梨をいただいた。布施された
物は断ってはいけない。頭陀袋を腰に下げて
いたので、そこに入れ持って歩いた。
後で、公園の木陰でいただいた。ナイフが
無いから、まず歯で表面を薄くかじりとって、
それから、かぶりついた。水分補給になり
旨かった。




⑱篤志

2008-08-21 02:53:57 | H20./8月 四国の旅
「巡礼に ご報謝~」は、巡礼お鶴。
虚無僧には 「報謝」か 「お布施」か、
用語として 悩むところだ。篤志家の
お志(こころざし)心づけという意味で
「篤志」はどうだろう。

さて、いただいた額は 12,000円にも
なった。徳島、松山、高知の都会では
反応は冷ややかだったが、宇和島で
5,000円。道後、内子、阿波池田などで、
1,000円札を5人の方からいただいたから
だ。本当に、あの日あの時、あの場所を
通らなかったら、いただけなかった。
一期一会のご縁の不思議を感じる。

「坊主と乞食は3日やったら やめられ
ない」と云う。たしかに本当だ。

だが そこで、何をもって「坊主」といい
「乞食」と見るのか。「乞食坊主」と「聖」
の違いは何だろう。いつも自問自答して
いる。四国遍路は「聖」への憧れと、
それに一歩でも近づく修行なのだ。


⑰ 収支決算

2008-08-20 09:55:35 | H20./8月 四国の旅
遍路のための宿は安いが、それでも一日1万円は
かかるという。名古屋からの交通費だけでも、
新幹線や特急を利用すれば 5万円以上。7日間
の旅なら10万は必要だ。それが 15,000円で行って
これた。

まず、前日に 長縄氏が「月謝の前払い」として
2万円を置いていってくれたことに感謝。いつも
必要な分だけ入ってくる不思議である。

これで 11,500円の青春18切符を買った。これは
各駅停車しか乗れないので、途中 先を急いで
特急に乗ったり、バスに乗ったため、交通費は
結局 19,000円になった。

6泊中 1泊は ビジネスホテルに泊った。宿泊費と
コインランドリーで、4,000円。あとは野宿。

食事は、三人の方にご馳走になった。それ以外は
105円のパンを三つ買っただけ。普段から一日一食。
虚無僧で周っていると 不思議とお腹が空かない。

しかし、あまりの暑さで、毎日 自販機で飲料水を
買って飲んだ。一日5本としても 600円。7日で
4,000円にもなった。

なんだかんだで、総経費は 27,000円。帰宅して
手元の所持金は 5,000円。差し引き 12,000円が
篤志家の方からいただいたお金ということになる。


⑯遍路と一路

2008-08-20 09:08:04 | H20./8月 四国の旅
「遍路ですか?」「いえ一路です」
「遍路なら 360円です」「じゃ遍路です」
鴨島の「鴨の湯」でのジョーク。

私は“遍路”だったのだろうか?。

一応、1番から5番までは周ったが、山門の外で
尺八を吹いただけで、お参りはしなかった。

お寺では、まず受付があって、納札と朱印帖を差し
出して お金を納めなければならない。献奏させて
いただくにもお金が要るようだ。

四国遍路は、一日1万はかかるという。観光バスや
タクシーに乗り、それなりのホテルに泊れば 100万
かかる。払える人はそれでいい。
功なり名を成しとげての四国遍路。お金を出しての
朱印帖も満願成就の証だ。
一方で、無銭の 乞食遍路もいるらしい。
いろいろな選択肢があっていい。

私には、お寺にお参りすることより、歩くことが
第一義と思えてきた。本来、弘法大師の足跡を辿る
旅であって、88カ“寺”ではなく 88カ“所”巡りだ。

行く先々で、篤い志を受けたり、また冷たい仕打ちを
受けることもあったり、酸いも甘いも辛いも体験する
修行の道だ。弘法大師に近づく追体験なら、大師は
満濃池を築いて 人々の難儀を救ったり、仏心の覚醒を
与えている。自分も、世のため人の為になるよう、
徳と人格を 磨かねばならない。そんな旅ができるのが
虚無僧だ。大師の追体験をするには、虚無僧は 最も
理に適った手段と思えてきた。



⑮まとめ

2008-08-20 06:06:10 | H20./8月 四国の旅
ここからはテーマ別にまとめて書いてみよう。

北京オリンピックも 高校野球の熱狂にも 背を
向けての 四国の旅。多くの人の篤志に甘えて、
無事 思いを遂げて帰宅できた。生かされている
ことへの感謝である。

以前、「尺八吹けなくなったら、歩き遍路で
野たれ死にしよう」などと書いたら、松山の
桜さんから「すぐ救急車が来て病院に運ばれ
ますから、野たれ死になんかできません」と
のコメントをいただいた。

まさに、現実はそうだった。こんな所で 野タレ
死になんかできない。皆さんに余計な迷惑が
かかる。“野タレ死にしないような生き方を
しなければ”との思いを強くして帰ってきた。

⑮ 番外編 近江長浜

2008-08-20 05:54:12 | H20./8月 四国の旅
岡山から姫路までの快速は超満員。立ち
姫路で 幸い座れたら、大阪も京都も バク睡
して 記憶にない。
終点米原駅で降り、さらに最終で長浜へ。

長浜の駅舎は新しくきれい。一階にも待合室が
あってベンチで寝れる。駅員からもお咎めなし。

翌日、市内を周る。浄土真宗の東本願寺派の
御坊があって、門前町は結構な賑わいだ。
お盆休み最後の行楽客か。

半日ほど周って、名古屋に帰る。1週間ぶり
の名古屋。やはり名古屋は明るくキレイだ。
女性もはじけている。みな私の方をみて、
ニコニコ笑顔になる。「見て見て」と指を
差す人も。駅構内を歩いているだけで、篤志
を差し出してくれる人も。すっかりいい気分
になって、また3時間ほど 駅前に立つ。

四国の旅で、変わったはずの音色が、いつしか
また名古屋の音に変わっていた。でも四国で
培った響きは 忘れていない。