現代の虚無僧一路の日記

現代の世を虚無僧で生きる一路の日記。歴史、社会、時事問題を考える

奈良少年刑務所の取り組み

2019-07-25 03:36:05 | 虚無僧日記

実戦倫理宏正会の会報「倫風」8月号に掲載

汐見稔幸氏の寄稿「少年刑務所の若者たちのやさしさ」から

奈良の少年刑務所は明治41年の建設。赤レンガ造りの

“美しすぎる刑務所”として知られる。なんと山下洋輔の祖父

山下啓次郎の設計。国の重要文化財。2017年に閉鎖され

このほど「監獄ホテル」として利用されることになり、

最近もテレビで紹介されるなど話題となった。

 

その少年刑務所で、受刑者たちに作詩を指導した寮美智千さんの話。

詩人である寮美千子さんは、この刑務所の美しさに惚れ込んで

奈良に移住。そこで出会った刑務所の職員から「少年たちに

詩を作ることを教えてくれないか」と依頼されて、引き受けることに。

刑務所に入っている少年たちだから殺人や窃盗の罪を犯した人たち。

家族に見放され、社会に背を向け、心を閉ざしている少年たちに

詩を作ることを教える。詩を作ることで一人の子が心を開くと

仲間たちも次から次へと、心を開いて、思いの丈を詩に託す。

その作品は、もう涙無しでは読めない。

「彼らはみなやさしかった」と寮美千子さん。

彼らは加害者である前に被害者だった。

家庭が、親が、社会が彼らを犯罪者に仕立て、そして出所後も

彼らを暖かく迎える社会はない。

寮美千子さんは「あふれ出たのはやさしさだった」「空が青いから

白をえらんだのです」他、何冊も本を出版している。

さっそく買い求めた。もう涙無しでは読めない。

刑務所から出所しても半数が再犯を犯して、刑務所に戻ってくるという。

ネットで検索すると、YouTubeで 奈良少年刑務所の少年たちが

寺社建築の技術を学んで、全員一体となって東大寺の精巧な

レプリカを作り上げた話も乗っていた。中の大仏まで再現している

その技術力と、共同作業の成果は驚くべきもの。こんなにすばらしい

能力をもった少年たちが社会に出てまた犯罪を犯すはずがない。

もし犯罪を犯させるならば、それは社会の冷たい目だとつくづく思う。

 


寮美千子「あふれ出たのはやさしさだった」

2019-07-25 03:35:45 | 虚無僧日記

奈良少年刑務所の受刑者たちに詩を作ることを教えた寮美千子さんの著書

『あふれ出たのは やさしさだった』から 転載させていただきます。

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題 「くも」 「空が青いから 白をえらんだのです」

たった1行だけの詩。これを作ったのは、父親から虐待され

薬物中毒で言語も不明瞭なD君。その彼がたどたどしく語った。

「ボク の おかあさんは 今年で 7回忌です」

どもりながら つっかえながら

「おかあさんは からだか弱かった。けれども おとうさんは

いつも おかあさんを なぐっていた。ぼくは まだ 小さかったから

おかあさんを 守ってあげることが できませんでした。

おかあさんは 亡くなるまえに ぼくにこう言ってくれました。

『つらくなったら、空を見てね。わたしは きっと そこにいるから』。

ぼくは おかあさんの 気持になって この詩を 書きました」

 

D君のたった1行の詩に こんなに重い背景があったなんて。

仲間たちも 胸打たれ、みなが次々に 心を開いた。

いろいろな思いを 口にし、D君に慰めや励ましの声を。

そして最後に、今まで全く口を開かなかったE君が

「ぼ、・・ぼ・・・ぼくは」必死に何か言おうともがいている。

「ぼ、ぼくは おかあさんを 知りません。でも この詩を読んで

空を みあげたら おかあさんに 会える気が してきました」

 

もう皆 わっと泣き崩れてしまった。教官たちも涙を隠せない。

この子たちは どうして ここにいるのだろう?と思った。

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その言葉が 社会の理解を得られる最大の力になりそう

 

 


「クリスマスプレゼント」 ほんとうに欲しいものは

2019-07-25 03:08:09 | 虚無僧日記

寮美千子『奈良少年刑務所詩集 空が青いから白をえらんだのです』から

 

「クリスマスプレゼント」

五十二人のクリスマス。

ごちそう食べて、ケーキも食べて

ゲームをやって 思い切り笑って

プレゼントだってもらえるんだ

(中略)

でも ほんとうにほしいものは

ごめんね これじゃない ちがうんだ

サンタさん お願い

ふとっちょで怒りん坊の

へんちくりんなママでいいから

ぼくにちょうだい

世界のどっかに きっとそんなママが

余っているでしょう

そのママを ぼくにちょうだい

そしたら ぼく うんと大事にするよ

(中略)

サンタさん 

ぼくは 余った子どもなんだ

どこかに さみしいママがいたら

ぼくが プレゼントになるから 連れていってよ

これからは ケンカもしない ウソもつかない

いい子にするからさぁ!

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もう 涙がとまらない。

 

もう何年も前、ある養護院の所長の講演を聞いた。

親に捨てられた子、親を失った子を養育する かつての孤児院。

 

「親が事故や病気で亡くなってしまった子はまだいい。

お母さんやお父さんは 星になって、空から自分のことを

見守ってくれている」と思う。あきらめられる。

でも、親に捨てられた子は、一番かわいそう。

この世の中で、一番自分を守ってくれるはずの親から捨てられたのだ。

人間への不信感はたいへんなもの。人を信用しない、信用できない

親への憎悪は、社会に向けられる。

彼らがこの養護院を出て、半数は刑務所か精神病院行き。

彼らに必要なのは、自分を理解してくれる人、愛してくれる人

“愛” だ。

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と。あの話を忘れたことはない。

 

 


まほうの消しゴム

2019-07-25 02:50:15 | 虚無僧日記

寮美千子『奈良少年刑務所詩集 空が青いから白をえらんだのです』から

「まほうの消しゴム」

なんでもかんでも 消せる消しゴム

いやなことや

いろんな人に迷惑かけたこと

こんな自分を 消せる消しゴム

そんな消しゴムが あったらいいな

 

(寮美千子さんのコメント)

あるわけないだろう! と言いたくなりましたが

L君だって そんなことわかっているはずです。

被害者や被害者の家族、自分の家族まで傷つけたということ。

消すことのできない過去を背負って生きていくのだと思うからこそ

祈りのような思いでつぶやいた言葉。

その重さが、ずっしりと伝わってきました。

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私だって同じ思いだ。

親の期待を裏切り、反抗し、妻子も裏切り、何人もの人を裏切り

随分多くの人に迷惑をかけてきた。

すぐ カァ-ッとなってキレる。人前で騒ぎ、暴れてきた。

そんな過去を、消せるものなら消したい。私の心の傷。