グローバルネイチャークラブのガイド日記

グローバルネイチャークラブ(旧グローバルスポーツクラブ)のガイド仲間が観察した伊豆大島の自然の情報を中心にお届けします。

バイパスの光害問題

2012年03月02日 | 歴史・文化
仲間たちとウミガメの産卵する海岸をフィールドとして観察を続けてきました。
その砂浜の近くに都道のバイパス工事が進んでいます。

どんな道が出来、どんな影響があるのでしょう?

見出し写真↑は、おととし2010年の7月上旬です。
ウミガメの産卵場所に設置した保護柵と砂浜の背後地の一部に
新しい橋を架けるクレーンのアームが見えています。

この海岸は、富士箱根伊豆国立公園の第2種特別地域に指定され、
そのこともあって比較的に自然環境が良好に保たれてきました。

こちら↓は、同年7月下旬。
25年ほど前から、
普段は水の流れていないこの涸れ沢に、
いくつも砂防堤(砂防ダム)を造り過ぎ、
山からの砂の供給がほとんどなくなってしまったので、
砂浜の浸食(浜ヤセ)が進行しています。

それでも、海岸の周囲に緑の雑木林が多く、
海岸に面して人家や外灯がないことが幸いして、
今まで奇跡的に毎年ウミガメの上陸・産卵が
続いて来ました。

ウミガメの子どもたちは、
砂の中で卵から孵って地上へ這い出た時、
月や星明りで薄っすらと明るく光る海を目指します。

その本能を知っている母ガメは、
人工的な照明のある海岸には産卵しないようにしているようです。

特に、この辺りが浜の中央部付近で、奥行きがあり、
最近は上陸・産卵の多い地点でした。と言うのは、
産卵場所が大波で冠水したり、卵が流出する危険のある
波打ち際に近い所には、母ガメも産卵したくないのですね。

ところが、工事が進んで橋が姿を表した昨夏には、
ここへの上陸がなくなってしまいました。

こちら↑は、バイパスの完成後には旧道となる
現在の都道です。間伏地区は都道沿いに人家が少ないですが、
歩道がないのが、安全上の問題であるようです。

見通しの悪いカーブ付近だけ少し広くすれば良かったのに、
と思っているのは私だけでしょうか?

ここで↑ご覧頂きたいのは、外灯の高さです。
電信柱の途中に取り付けられた街路灯は、
5メートル弱くらいの高さで、明かりは
周囲の防風林や雑木林に隠れてしまう程の高さに抑えられています。

こんな具合に、絶滅危惧種のウミガメの産卵地である海岸に
外灯の明かりが届かないようになっていたことが、
今まで、この海岸から大島生まれのたくさんの子ガメたちが
元気に旅立って行った大事なポイントでした。

こちらは、ほぼ完成に近づいた新しい橋と道路です。
右端のポールは?
頭が途切れるほど高い!(笑)

外灯が海岸の方を向いて設置されてしまったではありませんか!!
夜間、道路を通行するクルマのライトが、
浜側に漏れないように遮光板の設置を要望しておいたのですが、
かなえられなかっただけでなく、高ーーーい外灯まで
付けられてしまいました。

生物多様性の国際会議(COP10)が、名古屋で開催されたのは、
一昨年でした。これに先立ち、もう10年も前に作られた、
『新・生物多様性国家戦略』には、「ウミガメ類については、
産卵海浜の保全等の措置を講じる必要があります」と明記されています。

地球環境保全に関する関係閣僚会議決定(2002年3月)
環境省自然環境局自然環境計画課作成のA4版280ページもある冊子です。


海岸の駐車場の方から撮影して、
照明の頭の部分を拡大してみました。

離島の大島で、電灯が使われるようになったのは、
1916(大正5)年6月、
当時の元村と野増村が初めだったそうです。
大島電気株式会社の開業当時は、
石炭・木炭を燃料とするガスエンジン1台で、
1925(大正14)年同型エンジンを2台にして
全島送電が出来たそうですが、
当初は「半夜灯」という日没から深夜12時までだったようです。

1936(昭和11)年から昼間の送電も開始され、
1958(昭和33)年12月から島内全域24時間送電が
実施されたそうです。

それから、まだ50年と少ししか経っていないのですね!

現在は、A重油を燃料とするディーゼルエンジンによる発電に
切り替わっています。

特に、交差点や横断歩道は安全第一ですが、
本土の都道の規格をそのまま持ち込むのではなく、
自然豊かな国立公園の中を通る道なのですから、
みんなで知恵を絞って、
低い位置で山側に向けた照明にする、
遮光板を設置してライトが見えないようにする等、
改善して行きたいと思います。

(なるせ)
コメント
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