安倍政権が送り込んだNHKの会長。『朝日新聞』が記者会見の全文を載せているが、「公共放送」といわれるNHKのトップとしては、不用意な発言に終始し、人格識見ともトップとしてはまったくふさわしくないということがよくわかった。
この発言に対し、菅官房長官は「問題ない」といい、橋下大阪市長も「正論」だと言明している。国際感覚も、NHKがメディア機関であるという認識も持ち合わせていない人々が、トップにいるという恥ずかしさ。
これに対する意見がすでに社説などに記されている。
『琉球新報』社説。
NHK会長発言 公共放送担う適格性疑う
2014年1月27日
公共放送のトップとしての適格性を疑わせる不用意な発言が相次いだ。政治的公平性や独立性の観点から看過できない。
NHKの籾井(もみい)勝人会長は就任会見で「尖閣や竹島という領土問題は、明確に日本の立場を主張するのは当然のことだ」、特定秘密保護法について「通ったので言ってもしょうがないんじゃないか」と持論を展開した。
従軍慰安婦問題でも「どこの国にもあった。今のモラルでは悪い」と述べた上で、個人的見解として「韓国が、日本だけが強制連行したと言っているから話がややこしい」と韓国を批判した。
一連の発言は、タカ派色を鮮明にする安倍政権の主義主張の代弁と見まがうほどだ。時の政権に無批判に同調するかのような言動は報道機関トップの在り方として疑問だ。歴史認識については中国や韓国はじめ国際社会の反発を招いて外交問題にも発展しかねない。
確認したいが、NHKは政府が運営する「国営放送」ではなく、政府から独立した「公共放送」だ。NHKの設置は放送法に基づくが、国営放送に堕することがないよう、政府からの独立性を保つための諸規定がある。基本的に税金でなく視聴者からの受信料で運営されるのも、報道機関として最も重要な独立性を保つためだ。
籾井氏は「政府が右と言っているものを、われわれが左と言うわけにはいかない」と述べ、外国人向け国際放送で領土問題を取り上げる考えを示した。昨年10月の自民党の領土に関する特命委員会では「NHKの国際放送を活用すべきだ」との議論があったが、その思惑に呼応するものだ。
秘密保護法については、日本新聞協会や日本民間放送連盟など報道機関だけでなく多くの団体が、国民の「知る権利」の侵害を懸念し抗議声明などを発表している。「政府が必要だという説明だから様子を見るしかない」との籾井氏の発言は報道機関トップとしての見識を著しく欠き公共放送の信頼をも傷付ける。
当初から籾井氏の会長就任は「首相官邸の意向」とささやかれたが、就任会見で政権に近い人物であることははっきりした。
ジャーナリズムの役割には権力の監視もあるが、籾井氏にその任務を全うする見識と覚悟があるのか甚だ疑問だ。中立性や独立性が求められる公共放送トップの職責の重さを自覚すべきだ。
『信濃毎日新聞』社説。
NHK新会長 公共放送の行方が心配
01月27日(月)
NHKはこれから大丈夫か、と感じた人が多いのではないか。
新会長の籾井勝人氏が記者会見した。内容はNHKの先行きを心配させるものだった。
尖閣や竹島の領土問題について「明確に日本の立場を主張するのは当然のことだ」と述べた。
日本の立場を内外に伝えるのはいいとしても、政府の言い分を一方的に報じるだけではメディアの役目は果たせない。対立をあおり解決を難しくするだけだ。
中国や韓国の主張も過不足なく日本国民に伝えてこそ打開の環境は整う。NHKが政府の宣伝機関になってはいけない。
「通った(法律が成立した)ので、言ってもしょうがないんじゃないか」。これは特定秘密保護法についての発言だ。
法律は成立し公布されたが、施行はこれからだ。橋本龍太郎内閣のときの財政構造改革法など、公布された法律が施行されないで廃止された例はある。野党は秘密法廃止法案を今の国会に出すことにしている。国会の外では反対運動が続いている。
この状態での「しょうがない」発言は政府方針の追認になる。中立、公正と言えない。
世界に波紋を広げそうな発言もあった。従軍慰安婦についてドイツとフランスの国名を挙げながら「どこの国にもあった」と述べている。関連してオランダの売春街にも触れた。
従軍慰安婦はいま、米国への韓国少女像の設置などをめぐり国際問題になっている。発言は火に油を注ぐようなものだ。
籾井会長は「日韓基本条約で全部解決している」とも述べている。この発言も不適切だ。日本の謝罪と補償を求める人が今もいることを無視している。
NHKは受信料で支えられる公共放送だ。国営放送とは違う。国民、視聴者に奉仕するのが第一の役割だ。憲法が放送などメディアに「報道の自由」を認めているのも、国民の「表現の自由」を保障するためである。
公共放送であっても、いや公共放送だからこそ、NHKは政府から一線を画し報道機関として筋を通すべきなのだ。
会長の選任プロセスにあらためて目が向く。会長を選ぶ権限は経営委員会がもつ。政府は昨秋、委員のうち4人を安倍晋三首相に近い人物に差し替えた。そうやって決まったのが籾井会長である。
NHKが政府べったりにならないか心配だ。今後の番組作りには厳しい目を注がねばなるまい。
水島宏明氏の発言。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20140126-00031988/
この発言に対し、菅官房長官は「問題ない」といい、橋下大阪市長も「正論」だと言明している。国際感覚も、NHKがメディア機関であるという認識も持ち合わせていない人々が、トップにいるという恥ずかしさ。
これに対する意見がすでに社説などに記されている。
『琉球新報』社説。
NHK会長発言 公共放送担う適格性疑う
2014年1月27日
公共放送のトップとしての適格性を疑わせる不用意な発言が相次いだ。政治的公平性や独立性の観点から看過できない。
NHKの籾井(もみい)勝人会長は就任会見で「尖閣や竹島という領土問題は、明確に日本の立場を主張するのは当然のことだ」、特定秘密保護法について「通ったので言ってもしょうがないんじゃないか」と持論を展開した。
従軍慰安婦問題でも「どこの国にもあった。今のモラルでは悪い」と述べた上で、個人的見解として「韓国が、日本だけが強制連行したと言っているから話がややこしい」と韓国を批判した。
一連の発言は、タカ派色を鮮明にする安倍政権の主義主張の代弁と見まがうほどだ。時の政権に無批判に同調するかのような言動は報道機関トップの在り方として疑問だ。歴史認識については中国や韓国はじめ国際社会の反発を招いて外交問題にも発展しかねない。
確認したいが、NHKは政府が運営する「国営放送」ではなく、政府から独立した「公共放送」だ。NHKの設置は放送法に基づくが、国営放送に堕することがないよう、政府からの独立性を保つための諸規定がある。基本的に税金でなく視聴者からの受信料で運営されるのも、報道機関として最も重要な独立性を保つためだ。
籾井氏は「政府が右と言っているものを、われわれが左と言うわけにはいかない」と述べ、外国人向け国際放送で領土問題を取り上げる考えを示した。昨年10月の自民党の領土に関する特命委員会では「NHKの国際放送を活用すべきだ」との議論があったが、その思惑に呼応するものだ。
秘密保護法については、日本新聞協会や日本民間放送連盟など報道機関だけでなく多くの団体が、国民の「知る権利」の侵害を懸念し抗議声明などを発表している。「政府が必要だという説明だから様子を見るしかない」との籾井氏の発言は報道機関トップとしての見識を著しく欠き公共放送の信頼をも傷付ける。
当初から籾井氏の会長就任は「首相官邸の意向」とささやかれたが、就任会見で政権に近い人物であることははっきりした。
ジャーナリズムの役割には権力の監視もあるが、籾井氏にその任務を全うする見識と覚悟があるのか甚だ疑問だ。中立性や独立性が求められる公共放送トップの職責の重さを自覚すべきだ。
『信濃毎日新聞』社説。
NHK新会長 公共放送の行方が心配
01月27日(月)
NHKはこれから大丈夫か、と感じた人が多いのではないか。
新会長の籾井勝人氏が記者会見した。内容はNHKの先行きを心配させるものだった。
尖閣や竹島の領土問題について「明確に日本の立場を主張するのは当然のことだ」と述べた。
日本の立場を内外に伝えるのはいいとしても、政府の言い分を一方的に報じるだけではメディアの役目は果たせない。対立をあおり解決を難しくするだけだ。
中国や韓国の主張も過不足なく日本国民に伝えてこそ打開の環境は整う。NHKが政府の宣伝機関になってはいけない。
「通った(法律が成立した)ので、言ってもしょうがないんじゃないか」。これは特定秘密保護法についての発言だ。
法律は成立し公布されたが、施行はこれからだ。橋本龍太郎内閣のときの財政構造改革法など、公布された法律が施行されないで廃止された例はある。野党は秘密法廃止法案を今の国会に出すことにしている。国会の外では反対運動が続いている。
この状態での「しょうがない」発言は政府方針の追認になる。中立、公正と言えない。
世界に波紋を広げそうな発言もあった。従軍慰安婦についてドイツとフランスの国名を挙げながら「どこの国にもあった」と述べている。関連してオランダの売春街にも触れた。
従軍慰安婦はいま、米国への韓国少女像の設置などをめぐり国際問題になっている。発言は火に油を注ぐようなものだ。
籾井会長は「日韓基本条約で全部解決している」とも述べている。この発言も不適切だ。日本の謝罪と補償を求める人が今もいることを無視している。
NHKは受信料で支えられる公共放送だ。国営放送とは違う。国民、視聴者に奉仕するのが第一の役割だ。憲法が放送などメディアに「報道の自由」を認めているのも、国民の「表現の自由」を保障するためである。
公共放送であっても、いや公共放送だからこそ、NHKは政府から一線を画し報道機関として筋を通すべきなのだ。
会長の選任プロセスにあらためて目が向く。会長を選ぶ権限は経営委員会がもつ。政府は昨秋、委員のうち4人を安倍晋三首相に近い人物に差し替えた。そうやって決まったのが籾井会長である。
NHKが政府べったりにならないか心配だ。今後の番組作りには厳しい目を注がねばなるまい。
水島宏明氏の発言。
http://bylines.news.yahoo.co.jp/mizushimahiroaki/20140126-00031988/