この本は、『西日本新聞』の連載をまとめたものである。伊藤野枝の育ての親ともいうべき代と野枝との関係を記したものであるが、徐々に筆致が変わっている。著者は、最初は野枝に対してあまり快く思っていなかったようだ。しかし連載を重ねていくうち、次第に野枝が好きになっていく。それがよくわかる。野枝は、大杉と共に、やはりとても魅力的な人物なのだ。
今まで野枝と大杉に関わる本を読んできているが、本書は代との関わりを中心に置いていることから、野枝の生地である福岡からの視点による描かれているといってよいだろう。野枝は、『青鞜』はじめ、東京でいろいろな事件を巻き起こすが、根は福岡にあることを感じる。子どもを産むといえば福岡に帰り(全員ではないが)、金がなくなれば叔父である代に頼るなど、福岡との太い線が常に一本つながっていた。
著者は、野枝の従姉千代子(といっても義理の従姉となる)の孫と結婚し、代準介が遺した自伝的手記「牟田乃落穂」をもとにして、野枝と代との関係を跡づけていく。当初は野枝の傍若無人さにあきれかえっているペンが次第に野枝と大杉の魅力に吸い寄せられ、野枝と大杉の生の軌跡を愛情を持った文を書くようになる。
あたかも、代準介が大杉を知ってから、あるいは大杉の周辺にいた人々を知ってからかわっていったように。
伊藤野枝と大杉の一般的な「伝記」では、代は脇役である。だが、野枝の生が常に福岡とつながっているということは、生家ではなく、代とつながっているのだ。このつながりを記さない「伝記」は、不十分であることがよく分かる本となっている。
おそらく、野枝を理解するためには、必ず読まなければならない本であるといえる。
今まで野枝と大杉に関わる本を読んできているが、本書は代との関わりを中心に置いていることから、野枝の生地である福岡からの視点による描かれているといってよいだろう。野枝は、『青鞜』はじめ、東京でいろいろな事件を巻き起こすが、根は福岡にあることを感じる。子どもを産むといえば福岡に帰り(全員ではないが)、金がなくなれば叔父である代に頼るなど、福岡との太い線が常に一本つながっていた。
著者は、野枝の従姉千代子(といっても義理の従姉となる)の孫と結婚し、代準介が遺した自伝的手記「牟田乃落穂」をもとにして、野枝と代との関係を跡づけていく。当初は野枝の傍若無人さにあきれかえっているペンが次第に野枝と大杉の魅力に吸い寄せられ、野枝と大杉の生の軌跡を愛情を持った文を書くようになる。
あたかも、代準介が大杉を知ってから、あるいは大杉の周辺にいた人々を知ってからかわっていったように。
伊藤野枝と大杉の一般的な「伝記」では、代は脇役である。だが、野枝の生が常に福岡とつながっているということは、生家ではなく、代とつながっているのだ。このつながりを記さない「伝記」は、不十分であることがよく分かる本となっている。
おそらく、野枝を理解するためには、必ず読まなければならない本であるといえる。