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浜名史学

歴史や現実を鋭く見抜く眼力を養うためのブログ。読書をすすめ、時にまったくローカルな話題も入る摩訶不思議なブログ。

仙人

2020-06-25 20:39:53 | 芥川
 街角でねずみつかいをして生計を立てている李という男がいた。雨が降ったり雪が降ったりすると、商売にはならない。だから李はいつも貧しい。生きていくことは苦しいのである。

 芥川はこう書く。

 何故生きてゆくのは苦しいか、何故、苦しくとも、生きて行かなければならないか。勿論、李は一度もそう云う問題を考えてみた事がない。が、その苦しみを、不当だとは、思っている。そうして、その苦しみを与えるものをーそれが何だか、李にはわからないがー無意識ながら憎んでいる。

 李にとって、哲学的な問題は無縁であるが、その一歩手前まで考えはじめているのである。
 だがいつも苦しい。李は飼っているネズミにこういう。

辛抱しろよ、己だって、腹がへるのや、寒いのを辛抱しているのだからな。どうせ生きているからには、苦しいのはあたり前だと思え。それも、鼠よりは、いくら人間の方が、苦しいかしれないぞ・・・・

 ところがある日大雨に遭って、李は小さな廟に入り込む。そこで仙人にあうのだ。
 李は生きてることの苦しさを語り、また乞食のような風情の老人に同情しつつ語りかける。
 ところがその老人は仙人であった。廟にあった紙銭をあっという間に金銭や銀銭へとかえ、李は富豪となった。

 李は、仙人に、何故に仙人であるにもかかわらず乞食をして歩くのかと問うたら、仙人はこう答えたという。

 人生苦あり、以て楽むべし。人間死するあり、以て生くるを知る。死苦共に脱し得て甚、無聊なり。仙人は若かず、凡人の死苦あるに。

 仙人は、苦を求めて彷徨っていたのである。

 なかなか考えさせられる話である。死があるゆえに生を知り、苦があるが故に楽しみがあるのだ。

 だが私はこう思う、死んでしまっては、苦を求めることはできないし、したがってまた、楽しみもなくなる。

 生きつづけなければならない。
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日常

2020-06-25 18:31:10 | 芥川
 日常は続く。生きている限り、日常を生きていかざるを得ない。たとえ誰かが亡くなっても、その死を悲しんでも、日常がその悲しみを覆い隠す。そして悲しみは、いつのまにか消えていく。

 齢を重ねると、知人、友人の訃報の届く数が増えていく。その訃報は、過去の思い出を記憶の底から引っ張り出す。思い出し、感慨に耽る。

 どうも難しい本を読めない。仕方がないので、芥川の作品を読み進める。

 「虱」と「酒虫」を読んだ。「酒虫」の読み方は「しゅちゅう」であって、「さかむし」ではない。そう芥川は断言している。

 幕末、金比羅船が、長州征伐に向かう幕府軍の兵士と「虱」を乗せて西下する。虱にたかられながらの航海、そこに二人の武士が出てくる。一人は虱にたからせる者、もう一人は集めた虱を食う者、その二人が刃傷沙汰に発展する直前で他の武士によって抑えられる。そういう話である。

 実にバカらしい話である。これは創作だろう。なぜ芥川はこういう話をつくったか。思うに、長州征伐(おそらく第二次)のバカらしさを表現したのではないか。

 「酒虫」は中国の話をそのまま描いたそうだ。芥川はなぜこれを選んだか、ということが問題になろう。打麦場の主人・劉は大酒飲みだ。しかしどんなに飲んでも酔わない。そこへ蛮僧がきて、劉が病気であることを告げる。体の中に「酒虫」がいる、それを追い出さなければならない、というのだ。炎天下、劉は戸外に長時間横たわると、「酒虫」が出て、「酒虫」は近くにあった酒樽に飛び込む。
 その後、劉は酒を全く飲まなくなり、健康も害し、家業も傾いていった。

 要するに、容易な解釈だが、あえて好きなことをやめれば体が弱くなるなど、運が傾いていくから、好きなことはとにかく続けることだということなのか。

 ただ芥川はもっと深い意味で取り上げたのだろう。
 これは凡人の解釈である。


 
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都知事・小池とエジプト国家情報部

2020-06-25 16:39:47 | 政治
エジプト軍閥の“子飼い"小池百合子の運命①「カイロ大学声明」を出した組織の正体(特別寄稿)
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訃報

2020-06-25 15:37:24 | 日記
 今日、訃報が届いた。歴史学者のひろたまさきさんが亡くなられた。6月17日に息を引き取ったという。

 ひろたさんは、近代に於ける被差別への差別を、封建社会の遺制ではなく、近代の差別なのだということを、岩波書店の『差別の諸相』で明らかにした。また福沢諭吉の研究が有名である。それ以外にも多岐にわたる研究があるが、近年は竹久夢二論をまとめようとしていた(それは未完に終わってしまった)。
 私も昨年、「竹久夢二とその時代」をテーマに話したこともあり、夢二について手紙でひろたさんと何度も往復していた。

 ひろたさんは温厚で、そしてとても謙虚で、やさしい方であった。学問をする者は、こうでなければならないという模範のような人であった。

 ひろたさんとは、20年以上前からのお付き合いである。静岡大学情報学部にいた田村貞雄さんが、ひろたさんに集中講義を依頼したとき、田村さんからひろたさんを紹介していただいた。浜松に滞在中、二晩ほどご一緒した。

 歴史を学びはじめた頃から読んできた歴史書の著者が次々と亡くなっていく。金沢史男さん、海野福寿さん、金原左門さん、原口清さん・・・・これらの人々から受けた学恩は計り知れない。

 今また、ひろたさんと永遠の別れをしなければならない。歴史研究について心からの信頼をもって話し合う人はいなくなった。寂しい限りだ。

 ひろたさんからいただいた本を、もう一度読み直して、勉強させていただこうと思う。 
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検察は、自民党の味方

2020-06-25 13:51:40 | 政治

菅原一秀前経産相を不起訴 有権者への香典提供巡り

 検察は、よほどひどいことをしない限りは、自民党議員については立件しません。小渕、甘利・・・・・そういう人はいっぱいいるよ。
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広島 河井・選挙買収事件

2020-06-25 13:47:28 | 政治
 やはり、安倍晋三が・・・・

克行容疑者「安倍さんから」と30万円 広島・府中町議証言
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孤独地獄

2020-06-24 21:17:13 | 芥川
 「孤独地獄」を読む。

 地獄の中に「孤独地獄」というものがあるそうな。地獄は別の世界にあるのだが、この「孤独地獄」は、

・・・何処へでも忽然として現れる。云わば目前の境界が、すぐそのまま、地獄の苦艱を現前するのである。

 「孤独地獄」は誰にでも経験するものではないかと思う。しかしそれが現前するのは思春期のはじめである。強烈な孤独を感じ、それに苦しめられるという経験は、私にはあった。だがいわば「孤独地獄」を乗りこえてからは、そのような孤独に苦しむことはなくなった。

 芥川の「孤独地獄」には、それに陥った吉原の花魁に出入りする坊主、年齢は中年から老年に入る当たりだろうか。こうある。
 
 自分は二三年前から、この地獄へ墜ちた。一切のことが少しも永続した興味を与えない。だから何時でも一つの境界から一つの境界を追って生きている。勿論それでも地獄は逃れられない。そうかといって境界を変えずにいれば猶、苦しい思をする。そこでやはり転々としてその日その日の苦しみを忘れるような生活をしてゆく。しかし、それもしまいには苦しくなるとすれば、死んでしまうよりも外はない。昔は苦しみながらも、死ぬのは嫌だった。今では…

 坊主の身でありながら花魁のもとに通うのは、「孤独地獄」から逃れるためであったのか。

 しかしこの坊主も、仏道に精進すべきとしかいいようがない。坊主は仏道に生きる者として、「孤独地獄」に入り込むことはあってはならないのではないか。

 「鼻」の禅智内供といい、この坊主(名は禅超)といい、仏の道に生きる者として、情けない。いずれも禅宗系の坊主のようだ。

 芥川は、禅宗の坊主によい思いを持っていなかったのではないか。

 私も禅宗である曹洞宗の坊主には良い思いをもたない。この宗派の坊主は、カネに執着する。仏の道に仕える者として、邪道を生きている。


 
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首相記者会見は「慰労会」!

2020-06-24 20:48:02 | メディア
 メディア関係者は、権力者とお友だちなんですよ。だから安倍番は、ひたすら安倍晋三にくっついて、安倍晋三の気分を害しないようにするのが仕事。

 立岩さんの指摘は正しい。しかし改善される見通しはまったくない。安倍晋三=自民党・公明党政権を支えているのが、日本のメディアなのである。

 実態は総理の慰労会 “国民だまし”に加担するメディアの罪
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自尊心?

2020-06-24 13:55:53 | 芥川
 「鼻」読了。先ず思ったのが、ムダのないきれのよい素晴らしい文であるという感想。

 内供(ないぐ)はみずからの長い鼻をたいそう気にしていた。他の人には見られないほどの長い鼻を持っていることに自尊心が傷つけられ苦しんでいた。

 弟子が聞いてきた鼻を短くする方法の話を聞いて、やってみた。すると鼻は短くなり、唇の上におさまるようになった。すると今度は短くなったことにより、笑われたり弟子にからかわれたりするようになった。

 芥川は、その理由をこう書いている。

  人間の心には互に矛盾した二つの感情がある。勿論、誰でも他人の不幸に同情しない者はない。所がその人がその不幸を、どうにかして切りぬけることが出来ると、今度はこっちでなんとなく物足りないような心もちがする。少し誇張して云えば、もう一度その人を、同じ不幸に陥れて見たいような気にさえなる。そうして何時の間にか、消極的ではあるが、或敵意をその人に対して抱くような事になる。ーー内供が、理由を知らないながらも、何となく不快に思ったのは、池の尾の僧俗の態度に、この傍観者の利己主義をそれとなく感づいたからに外ならない。

 「自尊心」は「自」をつかうが、しかしそれは他者との関係の中でこその「自尊心」なのである。この場合、他者の目がなければ「自尊心」は傷つくことはない。他者の目を己の眼として見るから「自尊心」は傷つくのである。
 
 内供は「禅智内供」であるから禅宗の僧であろうか。禅をひたすら行うことによって、他者の目を滅却することこそが僧としてすべきことではなかったか。

 内供の鼻はもとのように長くなり、彼は心の安定を獲得する。

 みずからを飾ることなくそのまま提示して、他者の目をみずからの心に取り込まないことが安心立命の途であると思う。

 禅智内供は、仏道にもっと精進しなければならない。
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羅生門

2020-06-24 10:45:22 | 芥川
 芥川龍之介全集第一巻所収。ずっと昔読んだことがある。

 有名な小説だから、あらすじは書くに及ぶまい。短い話だ。主人公は、一人の下人である。

 この小説を読んでいろいろな解釈(ニヒリズム、エゴイズム、矛盾的存在)を試みているようだが、私にはそんなことはどうでもよいと思った。

 私には生きるということの必然性を記したものだと思えた。
 この世に人間として生まれ落ちた瞬間から、人間は生命がある限り生きなければならない。生きていくための必要条件、たとえば呼吸する、食べる、飲む、排泄する・・・は、生命ある限り続けていかなければならない。

 この下人も、そして死人の髪を抜いていた老婆も、そうした人間の必然性のままに行動しているとしか思えないのである。その必然性が目の前に提供されないとき、人間はどうにかして生命を維持すべく行動する。そこには倫理性はない。

 食べるものも、飲むものも、あらゆるものを所有できる者たちが倫理性をものともせずに生きている世界、とりわけ政治の中のそうした人間どもをみていると、人間のひとりとして描かれた下人について議論する必要は認めない。

 人間は、死が訪れるまで、ひたすら生きることに執着するのである。
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政治(自民党)の世界はカネまみれ

2020-06-24 09:31:45 | 政治

「初当選時も現金配った」 元秘書証言「せんべい箱の下にお金」

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税金の使途

2020-06-24 09:19:35 | 政治
 税金からの政党交付金、河井夫妻への1億5千万円、そのうち1億2千万円が政党交付金から出された。

 これに対する自民党・二階の説明が変化。

1億5千万円の使途「党は承知していない」 河井夫妻側への提供金で二階幹事長 従来の説明と食い違い

 「アベノマスク」では福島県の公明党関係者の実績も何もない業者が大金を手にしている。税金は、自民党・公明党によって山分けされているのだ。
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産経新聞は病んでいる

2020-06-23 21:53:59 | メディア

「アベガーは病んでいる」産経新聞社政治部編集委員、阿比留瑠比さんの主張をごらん下さい
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【本】長田弘(絵 いせひでこ)『最初の質問』(講談社) 

2020-06-23 21:28:45 | 
 長田弘さんの本は、『私の二十世紀書店』(中公新書)から読みはじめた。精神が疲れたり、イヤなことがあったり、何かを考えようとするとき、長田さんの本を手に取る。

 今日は、『最初の質問』。

 最初の質問は、「今日、あなたは空を見上げましたか」だ。

 空を見上げたのは2回。一回目は、うるさい爆音を残しながら飛んでいた自衛隊機がわが家の上空を通過したとき。「うるさい!!」って怒鳴りたかった。
 二回目は、畑にいたとき、聞いたことのないような鳴き声(あれはさえずり、ではない)をした鳥が頭上を通過したとき。「何だ、あれは!」という感じ。

 次。「雲はどんなかたちをしていましたか」?
 
 雲はあったけど、しっかり見ていない。

 「風はどんな匂いがしましたか」?

 今日は、午後になってもあまり風は感じなかったよ。

 最後の質問は、「時代は言葉をないがしろにしているーあなたは言葉を信じていますか」である。

 難しい問いだ。たしかに政治の世界をはじめ言葉をないがしろにしている例はいっぱいあるけど、でも言葉を信じないでは生きてはいけない。

 だから長田さんが紡いだ言葉、それぞれの言葉が豊穣で、優しさにあふれ、新しい息吹を吹き込まれたような言葉、そういう言葉を求めていく。

 
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「やっている感」

2020-06-23 21:24:27 | 政治
 何もしていないけれど、どうでもよいけれども、オレは、私は「やっている!」というように、メディアをつかって「やっているかのように見せる」こと、それが日本の政治。そのウラでは、自分たちの仲間に、せっせとカネを渡し続ける。それが日本の政治。

「一斉休校」側近主導で強行 結論ありきの政治アピール
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