◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「使者を遣わせて」って?

2007-12-06 19:23:27 | 気になる言葉、具体例
                  怪物を退治した者には褒美を遣わす
 11月30日の「2年も歩き回される」から続けて、五段活用から下一段活用へということについて書いてきましたが、今日の例文「使者を遣わせて」は、正しくは「使者を遣わして」であって、「遣わせて」は明らかな間違いです。これは、変化ではありません。誤用です。「変化」が「誤用」にエスカレートしていくということの一例です。
 使者を派遣するという意味なら、基本の形は「遣わす(他動詞、五段活用)」です。「褒美を遣わす」は「褒美を与える」という意味、「教えて遣わす」は、「教えてやる」という意味です。連用形はイの段ですから、「遣わして」、「使者を遣わして」となります。
 一方、心を煩わせるという意味の「気を遣わせて」という場合、「遣う(他動詞、五段活用)」が基本の形で、その使役表現が、未然形に「せる」を付けて「遣わせる」、その連用形が「遣わせて」です。つまり、この話し手は、全く意味の違う単語である「遣わす」と「遣う」の区別ができていないということになります。
 「悩ます」「悩ませる」、「巡らす」「巡らせる」、「寝かす」「寝かせる」、「滑らす」「滑らせる」、「働かす」「働かせる」、「腐らす」「腐らせる」、「座らす」「座らせる」、「回らす」「回らせる」、「歩き回らす」「歩き回らせる」、「任す」「任せる」、「済ます」「済ませる」、「浮かす」「浮かせる」、「つなぐ」「つなげる」、ここまではいいですよね。「張り巡らす」「張り巡らせる」、「もたらす」「もたらせる」、「研ぎ澄ます」「研ぎ澄ませる」はすっごく変です。「遣わす」と「遣わせる」は別物ですよぉ~。
コメント
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