大津プリンスホテルでは2月9日から11日の3日間、障がい者やアールブリュットに関する企画展『共融地点』や『アールブリュット国際フォーラム2018』が開催されました。
1階では2泊3日の宿泊による『第22回アメニティーフォーラム』が開催され、障がい者に関する講義やワークショップ、コンサート(小室等)・映画上映、ポスターセッションなどが行われ、活発な議論がされていたようです。
アールブリュットの企画展「共融地点」は2階のコンベンションホールで開催されており、同じく2階で開催されていた「国際フォーラム2018」の一部を聴講してから、「共融地点」の会場へと向かいました。
「国際フォーラム2018」では、今回の企画展「共融地点」のキュレータ-をされている石塚亜希子さんのプレゼンテーションを聴かせていただきましたが、手話や字幕でも講義の内容を伝える会場の雰囲気といい、逐一メモを取りながら講義を聴く聴衆者の熱心さといい、たいへん緊張感のある講義だったと思います。
内容としては「社会学的な視点からのアールブリュットの調査研究」「中国におけるアールブリュットの現状」を中心として、“アールブリュットの社会学的な定義について”・“中国の様々なアクターによるネットワークの国内外への拡がりについて”の講義でした。
李忠東(リ・ジョンドン)という中国の作家の作品を例にとって、独自に造形表現していたモノが翻訳されて作品からアールブリュットへ昇華されていく過程についても語られていて、作家・支援者・キュレーター・聴衆者・アートとしてのアールブリュットの領域についての説明をしてくださいました。
主体としては「アクターネットワーク理論」という言葉を使って説明をされており、分かりやすいように説明はされていたものの、理解するのは中々難易度が高い内容で頭を捻りながらの聴講です。
今回キュレーターを務められた「共融地点」のタイトルは化学の領域でいう“融点”をベースにしていると言われますから、「共融地点」とは“個体と液体が共有して融け合うような場所”とでも理解すればよいのでしょうか。
会場には「Ⅰ 観察記 街、車、人.....」「Ⅱ パーツとパターン」「Ⅲ こころの風景」「Ⅳ 呼吸のように」「Ⅴ 日々の暮らしを綴る」の5つのゾーンに31名の作家の作品が約150点展示されている規模の大きな企画展です。
日本の作家では「宮川隆」「本城直」「土屋正彦」「澤田真一」など他の企画展でも馴染みのある作家さんの作品がありましたが、意外だったのは粘土造形作家として数多くの魅力的な作品を造られている澤田真一さんの作品が、今回は紙で造った精巧な車模型の作品だったのには驚かされました。
初めて見た作家の方の作品も、「石原峯明」さんはドットとマーカーの塗りつぶしで幻想的でデザイン性の素晴らしい作品でしたし、「与那嶺俊」さんはたくさんの地球に妖しい花と塔の大きな絵にメモのような無数の書き込みがされた作品で大作揃いで見応え充分。「西之原清香」さんの絵はつい蛭子能収の絵を連想してしまいそうになる無感情・無機質に笑う人が連なる興味深い作品です。
「林田嶺一」さんの作品は昔の映画の一場面のような作品で、“木を組み合わせたキャンバスにレトロでモダンでありつつも幻のようにありえないものが描かれている”。思わず気持ちが引きづられそうになるノスタルジックな作品です。
これは林田さんが満州国に生まれ、大連、ハルビン、上海、青島などを転々とした幼少期の記憶が影響しているようですね。
中国の作家の作品も日本のアールブリュット作品と同様に、精密で細かな線で色付けされた作品が多く見られ(「呉美飛」「三毛」「喬雨龍」「巴子」など)、15mもの長い絵巻の「ワン・ファ」さんの作品や仏教画のような「グオ・フォンイー」さんの作品。
山水画のような構図の中にコミカルな人物が描かれた「グオ・シウロン」さんの作品など多岐に渡った作品が並びます。
会場の出口近くに塗り絵ワークショップがありましたので「チャオ・ユーロン」さんのオリジナルな怪獣の下絵と、カンカカリヤ(宮古島の霊能者)として描く宮川隆さんの下絵をいただいて帰りました。
「チャオ・ユーロン」さんの細かい図柄をカラフルに塗り分けるのはちょっと難しそうですね。
キュレーターの石岡亜希子さんは案内文に
“文化や環境を異にした作者による、「表現の類似性と特有性に着目」していきます。日本と中国、主体と客体が融け合うように展示します。背景は様々でありながらも通底して見える物語を感じてください。”と書かれています。(抜粋)
各作家の持つ個別の背景や国や作風に違いはありますが、表現の類似性と特有性を感じ取れる構成になっているいい企画展だったと思います。
日中の作家の多くの作品が溶け合うように一堂に集められたこの企画展に今回訪れた意味は大きかったと感じています。
会場となった大津プリンスホテル
1階では2泊3日の宿泊による『第22回アメニティーフォーラム』が開催され、障がい者に関する講義やワークショップ、コンサート(小室等)・映画上映、ポスターセッションなどが行われ、活発な議論がされていたようです。
アールブリュットの企画展「共融地点」は2階のコンベンションホールで開催されており、同じく2階で開催されていた「国際フォーラム2018」の一部を聴講してから、「共融地点」の会場へと向かいました。
「国際フォーラム2018」では、今回の企画展「共融地点」のキュレータ-をされている石塚亜希子さんのプレゼンテーションを聴かせていただきましたが、手話や字幕でも講義の内容を伝える会場の雰囲気といい、逐一メモを取りながら講義を聴く聴衆者の熱心さといい、たいへん緊張感のある講義だったと思います。
内容としては「社会学的な視点からのアールブリュットの調査研究」「中国におけるアールブリュットの現状」を中心として、“アールブリュットの社会学的な定義について”・“中国の様々なアクターによるネットワークの国内外への拡がりについて”の講義でした。
李忠東(リ・ジョンドン)という中国の作家の作品を例にとって、独自に造形表現していたモノが翻訳されて作品からアールブリュットへ昇華されていく過程についても語られていて、作家・支援者・キュレーター・聴衆者・アートとしてのアールブリュットの領域についての説明をしてくださいました。
主体としては「アクターネットワーク理論」という言葉を使って説明をされており、分かりやすいように説明はされていたものの、理解するのは中々難易度が高い内容で頭を捻りながらの聴講です。
今回キュレーターを務められた「共融地点」のタイトルは化学の領域でいう“融点”をベースにしていると言われますから、「共融地点」とは“個体と液体が共有して融け合うような場所”とでも理解すればよいのでしょうか。
会場には「Ⅰ 観察記 街、車、人.....」「Ⅱ パーツとパターン」「Ⅲ こころの風景」「Ⅳ 呼吸のように」「Ⅴ 日々の暮らしを綴る」の5つのゾーンに31名の作家の作品が約150点展示されている規模の大きな企画展です。
日本の作家では「宮川隆」「本城直」「土屋正彦」「澤田真一」など他の企画展でも馴染みのある作家さんの作品がありましたが、意外だったのは粘土造形作家として数多くの魅力的な作品を造られている澤田真一さんの作品が、今回は紙で造った精巧な車模型の作品だったのには驚かされました。
初めて見た作家の方の作品も、「石原峯明」さんはドットとマーカーの塗りつぶしで幻想的でデザイン性の素晴らしい作品でしたし、「与那嶺俊」さんはたくさんの地球に妖しい花と塔の大きな絵にメモのような無数の書き込みがされた作品で大作揃いで見応え充分。「西之原清香」さんの絵はつい蛭子能収の絵を連想してしまいそうになる無感情・無機質に笑う人が連なる興味深い作品です。
「林田嶺一」さんの作品は昔の映画の一場面のような作品で、“木を組み合わせたキャンバスにレトロでモダンでありつつも幻のようにありえないものが描かれている”。思わず気持ちが引きづられそうになるノスタルジックな作品です。
これは林田さんが満州国に生まれ、大連、ハルビン、上海、青島などを転々とした幼少期の記憶が影響しているようですね。
中国の作家の作品も日本のアールブリュット作品と同様に、精密で細かな線で色付けされた作品が多く見られ(「呉美飛」「三毛」「喬雨龍」「巴子」など)、15mもの長い絵巻の「ワン・ファ」さんの作品や仏教画のような「グオ・フォンイー」さんの作品。
山水画のような構図の中にコミカルな人物が描かれた「グオ・シウロン」さんの作品など多岐に渡った作品が並びます。
会場の出口近くに塗り絵ワークショップがありましたので「チャオ・ユーロン」さんのオリジナルな怪獣の下絵と、カンカカリヤ(宮古島の霊能者)として描く宮川隆さんの下絵をいただいて帰りました。
「チャオ・ユーロン」さんの細かい図柄をカラフルに塗り分けるのはちょっと難しそうですね。
キュレーターの石岡亜希子さんは案内文に
“文化や環境を異にした作者による、「表現の類似性と特有性に着目」していきます。日本と中国、主体と客体が融け合うように展示します。背景は様々でありながらも通底して見える物語を感じてください。”と書かれています。(抜粋)
各作家の持つ個別の背景や国や作風に違いはありますが、表現の類似性と特有性を感じ取れる構成になっているいい企画展だったと思います。
日中の作家の多くの作品が溶け合うように一堂に集められたこの企画展に今回訪れた意味は大きかったと感じています。
会場となった大津プリンスホテル