僕はびわ湖のカイツブリ

滋賀県の風景・野鳥・蝶・花などの自然をメインに何でもありです。
“男のためのガーデニング”改め

五箇荘近江商人屋敷~雛匠 東之湖『近江上布雛展』~

2019-03-02 17:18:33 | アート・ライブ・読書
 滋賀県では「びわ湖のひな人形めぐり」と題して、8つの市町観光協会の共催で“ひな人形展”が開催されています。
開催地は“東近江市(五箇荘)・近江八幡市・日野町”などの近江商人屋敷に展示されているもの、“竜王町愛荘町・坂本や石山の大津市の寺院や観光施設での展示”など各地域に渡っての開催となります。

毛色の違ったものとしては“彦根藩井伊家に伝わる雛道具”や“長浜市のガラスのお雛様展”ということになりますが、今回訪れた東近江市の五箇荘近江商人屋敷では雛匠「 東之湖」さんの雛人形展が開催されています。
現在、滋賀県在住の東之湖(とうこ)さんは、ひな人形作りの全行程を一人で行う人形作家で、びわ湖を始めとする滋賀の風景や近江八景をテーマとして作品を作られている方です。



五箇荘は繖山・和田山・箕作山に周囲を囲まれた田園地帯で、聖徳太子に縁のある寺院が多い地域です。
近くには西国三十三所札所の観音正寺や石馬寺などがあり、集落内(金堂)にも聖徳太子創建伝説のある寺院が残るといいます。



五箇荘は幕末から明治~昭和戦前にかけて近江商人を輩出したとされますが、最初は農閑期に天秤棒を担いでの産物廻しから始めて、現在も続く大企業の系譜を作ったのですから並み外れた商才と努力と言う他ありません。
「外村繁邸」は、東京日本橋と高田馬場に呉服木綿屋を開き活躍した家で、繁は昭和初期の小説家として名を馳せた方のようです。



縁側から望む庭には雛人形が飾られてあり、“お雛さまの園遊会”と名付けられています。
もちろん室内にも数多くの雛人形が飾られてありますが、かつての豪商の家に伝わる雛人形ですからレトロ感もあって見事な人形たちでした。(18組の雛人形が展示)



「外村宇兵衛邸」は外村繁家の本家筋にあたり、呉服類の販売で商圏を広げ、全国長者番付に名を連ねるほどの豪商だったといいます。
現在の御幸毛織(ミユキ)を株式会社化して高級紳士服メーカーの礎を築いた方ともされています。



外村宇兵衛邸で目を引くのは「御殿飾り」の雛人形でしょうか。
御殿を京の御所に見立てて飾られていますが、現代の人は段飾り雛に目が慣れてしまっていますから、こういう雛飾りには違和感と魅力を感じてしまいます。



御殿飾りは明治・大正・から戦後にかけて流行したものだそうですが、主に西日本で人気があったようです。
江戸では段飾りが発展し、関西では御殿飾りが発展したようですから、やはり関西人の根底には京都文化への愛着があったのでしょうね。



この御殿飾りは宮中の嫁入りを表現しているといい、六人官女は宴の料理を運んでいうのだとか。
確かに官女はみな華やかな宴に相応しい表情をしていますね。



余談ですが、外村宇兵衛邸ではお内裏様とお雛様のコスプレで写真撮影できるようになっていましたので、お内裏様の衣装で写真撮影をさせていただきました。
観光さんに見られるので多少恥ずかったのですが、“高貴な姿で気品に溢れてますね。”と自分で言うお内裏さんでした。

さて、いよいよ東之湖さんの雛人形が展示されている中津準五郎邸へと向かいます。
中津準五郎は朝鮮半島に百貨店を開業して、「百貨店王」の名を欲しいままにした方でしたが、終戦とともに資産の大半が海外だったために閉店の憂き目にあわれたといいます。



東之湖さんの作品は滋賀県で鎌倉時代から発展した麻織物の近江上布を使って、ひな人形製作の全ての工程を一人で行っておられるそうです。
「清湖雛(せいこびな)物語」は2004年から五箇荘の雛人形めぐりに人形の寄贈をされており、“近江八景”シリーズは既に七景までが製作されています。



来年の雛人形めぐりに「石山秋月」が製作されたら“近江八景”は完成となります。
人形は生き生きとした表情に今にも動き出しそうな姿をしており、何よりも魅力的なのは衣装の素材感や色彩の良さだと思います。



「唐崎の夜雨(近江八景)」は2019年に製作された人形で“男性的な女性的な魅力で女形を表現、時雨を和傘に櫻の花びらの道”を歩きます。
びわ湖を表現した白砂の上を「六人官女(2007年)」のうちの三人官女が竹に乗って湖上に浮いています。



美しいオレンジの色彩の衣装を纏って音を奏でるのは「十人囃子(2008年)」。
“湖面に桜をうつし、明ける近江の郷”湖周にさく桜をイメージした作品とあります。



「無垢の女神(2011年)」は“原点に復帰し「純粋、清楚な気持ちで未来に向かって進んでいきたい」の思いで白無垢の十二単に...”とあります。



「聖水の舞(2004年)」は滋賀のシンボル琵琶湖をモチーフにした作品で、五箇荘の「雛人形めぐり」に最初に寄贈された人形です。
「男雛(2006年)」は「聖水の舞」が一人では淋しそうとの声を受けて製作され、一般募集で「清湖雛」と命名されたといいます。



最後に訪れたのは藤井彦四郎邸になります。
藤井彦四郎は糸の販売で創業した後、いち早く人絹(レーヨン)に着眼して、スキー毛糸で財を築いた方といいます。

敷地にはログハウスがありますが、これは海外で見て気に入ってすぐに建てたもの。
航海で利用した船が気に入ったといって、その場で買ったなど逸話はいろいろとある方のようです。



玄関に座る主人の人形は京都の本宅だった「和中庵(現在はノートルダム女学院が所有)」にあったもので、泥棒よけに使われていたものだそうです。
藤井彦四郎邸にも東之湖さんの人形が展示されていて、下は東日本大震災の被害から復興に向けて努力されている方々への自身が出来る支援として作られた「絆雛」シリーズとありました。





邸宅内には水琴窟のような美しい音色が響いていて、何の音かと思って見ると「ハンドパン」という楽器の演奏でした。
「ハンドパン」はインドのガタムとトリニダード・トバゴ共和国ノスティールパンを参考にして、2000年頃にスイスのPANArt社が開発した楽器のようです。
雛まつりに合わせた曲調で演奏されていましたが、ワールドミュージックやアンビエントミュージックにも合いそうな楽器ですね。



商人屋敷4館を巡ってお雛様を見て歩きましたので、そろそろお昼ご飯の時間です。
食事は古民家を使った茅葺き屋根の「めんめんたなか」さんで雛定食をいただきます。
室内も古民家そのままの雰囲気たっぷりで、食事の出来上がりを待っていると庭の木にはヤマガラがやって来て、一足先に食事中なんて光景もありました。





ひな祭りに食べるものというと...ちらし寿司・白酒・ひなあられ・菱餅などがありますが、はて菱餅って食べた記憶がない。
ちょうど商人屋敷で菱餅を売っていましたのでお土産に買って食べてみることに...。
菱餅の赤・白・緑の3色は、赤は魔除け(桃の花)、白は清浄(雪)、緑は健康(新芽)を表すそうですね。




コメント
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