僕はびわ湖のカイツブリ

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“男のためのガーデニング”改め

御朱印蒐集~京都府京田辺市 息長山 観音寺(大御堂)~

2019-03-28 05:39:39 | 御朱印蒐集・仏像・磐座・巨樹・古墳・滝・登山
 寺院へ参拝した時、御本尊の厨子が開かれて本尊が姿を現す瞬間ほどドキドキすることはありません。
特別開帳の時に大勢の人の前で御開帳される時もそうですが、自分一人だけの場合は特に緊張感と共に何ともいえない感動があります。

今回の観音寺では一人だけでの御開帳となり、それはまるで“いとうせいこう&みうらじゅん”か“五木寛之”か“中村芝翫”かといったTV番組を思い浮かべる瞬間でもありました。
国宝・十一面観世音菩薩とのまさしく一期一会の出会いに感謝致します。



京都府南部の京田辺市や木津川市などの辺りは南山城地方とも呼ばれ、十一面観音の多い地域だといわれます。
滋賀県の湖北地方も観音の里と呼ばれるように十一面観音が多い地方ですが、南山城地域は奈良県と隣接し、旧街道に近いこともあり、天平・平安の仏教文化が根付いてきた地域のようです。



観音寺は天武天皇の勅願により法相宗の僧・義淵(西国札所・岡寺などの創建者)によって創建された親山寺(筒城寺)が始まりとされ、744年には東大寺初代別当・良弁僧正によって再興し、普賢教法寺としたとされます。
その後、度々の火災に遭いつつ、藤原氏の援助によって再興されるも1565年に再び焼失した後は堂宇一つを残すのみとなったようです。

石標は少し離れた場所に埋もれるように残されており、また鐘楼も少し御堂とは離れていうことから、かつての寺域は現在よりも遥かに広かったことが伺われます。
冬の寂しい田園の先に寺院がありますが、案内板がなければここでいいのか?と疑問が湧くような場所にある寺院でした。



本堂から少し離れた位置に鐘楼があり、駐車場の横には綺麗なトイレが設置されています。
帰り際にはタクシーで参拝に来られたご婦人がおられましたので、訪れられる仏像好きが多い寺院なのかと思います。



国宝の仏像が安置されている場所は一般的には宝物館などの施設になると思うのですが、この観音寺ではごく普通の堂宇に安置されています。
かつては五重塔などの堂宇が立ち並んでいたようですが、現在はこの観音堂と前方庭園を残すのみとなっています。



本堂までの石畳を歩いて本堂へと向かいますが、この観音堂は1953年に再建されたという比較的新しい御堂で、外観からでは国宝仏像が安置されているイメージが湧かない造りとなっています。
ここでまさかあの素晴らしい十一面観音像に出会えるとはこの時点では想像もつきません。





この地が奈良の仏教文化と深くつながっていると感じたのは大御堂に置かれた「東大寺・二月堂の修二会」のお水取りに使われる竹でした。
「二月堂竹送り」では周囲20cm・重さ100㌔の根付きの真竹を掘り起こし、観音寺で「竹寄進」の法要の後、二月堂まで運ぶそうです。





二月堂では籠松明として杉の葉やヘギ・杉の薄板で籠目状に仕上げられ、火の粉を散らしながら回廊を駆ける修二会のクライマックスの際に使われるようです。
この儀式は第二次大戦や風水害によって途絶えたものの、1978年に40年ぶりに復活したといいます。





まず受付となっている住職さんの家(庫裡)へ行って拝観したい旨伝えると“本堂の前でお待ちください、”とのこと。
しばらくすると私服から僧衣に着替えられた御住職が来られ“では本堂へお上がりください。”と案内される。

厨子はこの時、閉められていましたが、線香を焚かれてご焼香を済ませるといよいよ御開帳です。
須弥壇の前でたった一人に行われる御開帳の何と贅沢でもったいない時間よ。至福の時間です。





木心乾漆の十一面観音像は約173cmとほぼ等身大で一部補修はされているとのことでしたが、凹凸が際立ち体躯もよく、顔立ちや目線に力強い意志の強さを感じます。
南山城はかつて天平文化の影響が強く、興福寺の末寺が幾つかあってこのような素晴らしい仏像が残されているのでしょう。
しかし、奈良の都の衰退と共にそれぞれの寺院は無住化していってしまったそうです。

当初は奈良仏教の影響下にあった南山城の地域も、その後は真言仏教の影響を受けるようになり、観音寺も真言宗智山派の寺院となっています。
そんな経緯もあってか、脇陣には数躰の「薬師如来坐像」や「一二神将軍」「不動明王立像」が祀られており、密教の影響が見られます。



国宝指定の十一面観音像全7躰の一覧資料が置かれていましたが、実際に拝観した仏像もそうでない仏像も含めてそれぞれ魅力があります。
観音寺の十一面観音は、写真左にある聖林寺(奈良県桜井市)の十一面観音像と比較されることが多いようですが、同じ木心乾漆像である以外にもよく似た印象を受けますね。

見たことのないお経がありましたが、これは「般若絵心経」という漢字の読めない方にもお経を唱えることが出来るように作られた絵による経典だそうです。
細かく見ていくと分かりやすい絵(言葉)になっていますが、どういう意味なんだろうと悩ましいものもいくつかあります。



南山城は十一面観音像を祀る寺院が多く、また“かくれ古寺”のようにひっそりと佇む寺院や磨崖仏が多い地域のようです。
時間をかけてゆっくりと天平・藤原の文化に触れたい地域になります。


コメント
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