いろいろ無茶のような。


SRX600のトランスミッションの作業に戻る。
これは左のケースにミッションを挿している。この状態だとなんとなく良さそうにも見える。


ところが、両方のケースを合わせてみると、


上の写真と比較すると、噛み合いがずれたのがわかる。


5速ギアは、ピニオン側がわずかに幅が広いので、上の写真とは逆に、ホイールギアが引っ込んで見えるくらいが中心当たりになる。


こんなふうになるように、シャフトとシフトカムの位置を決めなきゃなんない。


ケースに組んだシャフトの、軸方向のガタを測ってみると、ドライブアクスルで0.930mm、シフトカムはガタがないかと思ってたら、右から押し込んだらベアリングごと0.615mmも左に動くことがわかった。メインアクスルは、2速ピニオンを組んでないからなんともいえない。
いろいろ試してみた結果、とりあえず、シフトカムで位置関係が決まる4、5速ホイールギアの間隔に対し、ピニオン側の4、5速の間隔がわずかに広くて、両方がセンターで当たらない状態になっていること、5速ピニオンの摩耗状態から推測して、シフトカムの左ケース側軸受けが摩耗するか何かでだんだん左に引っ込んでいっていた可能性があること、スナップリングで位置決めされているギアの位置をシムで動かせばなんとかなりそうなこと、などが見えてきた。


内径15、20、25mmのシムを調達。
20と25は、厚さ0.2mmと0.3mm、15は0.1mmの各10枚セットだ。
モノはベアリングの位置調整なんかに普通に使われるやつ。


4速ピニオンは、左に0.6mm移動。


3速ホイールを、右に0.6mm移動。


写真右端の2速ピニオンを圧入した、メインアクスル。
2速を入れてケースに組んだら、メインアクスル左右のガタはごくわずかだった。


2速ピニオンを圧入前に加熱したトーチのノズル。
ステンレスは、加熱されると、淡い黄色からオレンジ色、青、と変色する。
エキパイもキレイに焼けばこうなるはずなんだけどな。


何度かの試行錯誤の結果、ガタと回転の軽さ、ギアの噛み合いの妥協点として、メインアクスルは、左端に0.3mmのシムを入れ、ドライブアクスルには同じく左端に0.7mm、シフトカムには左端に0.6mmを入れた。
その状態でケースに組んでの、5速の噛み合い。


同じく4速。


3速。
このあたりがアライメント調整の限界だろう。
ギアの回転は軽いし、シフトも軽くスコスコ入る。
シムがスラスト荷重に耐え得るかという心配はなくもないけど、元々入っていたスラストワッシャにも摩耗の痕跡はなかったし、コンスタントメッシュの平歯車だから、まあ大丈夫だべ。


もうひとつ気になってるとこがある。
トランスミッションの潤滑は、オイルスカベンジ系統で行われる。
右ケースに付いているスカベンジポンプの出力は、写真右端の鉛筆が示す通路から左ケースに入り、真ん中の鉛筆の経路のオイルギャラリを上がっていく。
上がっていくオイルは、まずメインアクスルの左ベアリング部でメインアクスル内とクラッチアーム部に分岐し、ピニオンギアとクラッチを潤滑する。
さらに上がって、真ん中の鉛筆が指している通路にも分岐し、ドライブアクスルとホイールギアにオイルシャワーをかける。
さらに上がったオイルは、左端の黄色い鉛筆のポートでスカベンジホースにつながり、オイルタンクに戻るのだ。


ドライブアクスル用のオイルシャワーのポート。
鉛筆でマークしたのは、ギアの位置だ。


こんな感じ。
ギアは写真の下から、2、5、3速。


5速と3速の間あたりの穴は斜めで、3速の方を向いているようだ。
穴は1.3mmのドリルがジャストフィット。


2速のあたりの穴もやや斜めになっていて、5速の方を向いているように見える。
しかし、穴に近い2速ホイールギアが5速よりかなり大きいので、実際5速ギアにちゃんとかかっているのかどうか疑問だ。


セルのSRX400と同じ5Y7エンジンのXT400E。
オイルフィルターケースの上にボスがあり、SRXではここから5速ギアの上にオイルパイプが設けられていて、フィード系統のキレイなオイルで5速を洗うようになっている。
海外のサイトで、5速ギアの問題への対処として、キックのSRX600にそのパイプを増設した、という例もあった。


ちょっと無茶をしてみよう。
5速の真上に、5速直撃になるようにポートを追加する。
ピンバイスで地道に掘る。
オイル通路から出てる針金は、ちゃんと意味がある。


掘った穴からパークリ吹いて洗って、針金の先に巻いて穴の奥に突っ込んであったウェスを抜き取ってクリーニングする。


まっすぐ5速を狙う穴を、1.3mmΦで開けた。


穴の中に切り粉が残ってないことを確認。
このくらいの穴なら、スカベンジが不足するようなこともなかろう。
たぶん。


クランクを試しに修正してみて、ランナウト再測定。
左0.010mm、右0.008mmになった。少しマシになったけど、あんまり変わんなかったな。もっと追い込むのもちょっと怖いような気がするので、試しのうちにやめといた。


ミッションはいい感じになったので、クランク単体をケースに試し組み。
黒いのは専用のSST。本来、ケースとの間にも専用のSSTのスペーサーがあるが、俺は木片で代用した。


ケースを合わせて、コンロッドがケースに当たんないように支える。
クランクを引っ張り込む時も、片側からでもコンロッドをこうして吊っておくと、うっかりコンロッドがひっくり返ってしまうのを防げる。


ケースの合わせボルトは、試しでもきちんとトルクをかける。
クランクは、コンロッドを軽く押し込むだけで、クルクルと気持ちよく軽く回転した。


ただ、交換していない左ベアリングが、かすかに変な音がするような気がする。
試しにグリス詰めてみたけど、変な感じは変わらない。
一度クランクを抜いて、ベアリングを調べてみると、わずかに異物が残っているようだった。
ベアリングを徹底的に洗い直したところ、変な音はしなくなった。
ベアリングのガタは大きめのような気がするけど、単気筒のクランクベアリングだから、C3とかの隙間の大きいベアリングなのかもしれない。パーツリストに出てこないからわかんないけど、本体の刻印は、KOYOの6306SHのようだ。
それに、こいつを交換するとなると、圧入のカムチェーンスプロケットを脱着しなきゃないから、なかなか手を出す気になれない。
キレイに回るようになったから、今回はまあいいかな。
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