上野千鶴子が、老いた人の自立、介護、家族、市民事業体(NPO)などについて分かりやすく語る「老いる準備 介護すること されること」学陽書房 を読んだ。
しがらみの多い家族の絆をたち、わがままに生きようと、割り切った考えを明解に主張している。とくに義務感の強い多くの女性には、著者の割切った主張を自分に当てはめて考えてみることをお勧めしたい。
著者は言う。フェミニズムは男のできることは全部、女にもできると主張してきた。同じ道を向老学も進んではならない。年取っても若々しく生きようというのは無理がある。
自力での生活が無理でも、私のしたいことは私が決める、援助が必要ならそれを得る権利が自分にはある、というのが障害者や年寄りの自立だ。
家族制度
著者は家族というものにあまり期待をしていない。介護を子供に期待できないし、すべきでもない。どうしても、嫁が夫の親の介護を引き受けるなら、事前に遺産相続を確定するために当の夫の親と養親子契約を結び、他の兄弟にあらかじめ相続放棄の書類にハンコを押してもらっておくことを勧める。
介護保険
介護保険制度によってこれまでタダで行なわれてきた女性の介護が社会化された。とくに、介護保険が金の出どころが意識されない税方式ではなく、負担が顕在化する保険方式になったため介護の社会化が広く認識された。
市民事業体
介護サービスの担い手として、「官」は非効率で、「民」は利潤を最優先で介護にはなじまず、市民事業体に著者は期待している。著者は、介護は、企業法人やNPO法人でなく、所有と経営が分離していない組合法人(市民事業体)の形が望ましいとしている。
介護ワーカーが仕事を続けられる安定して収入が確保でき、活動が持続できる(サステイナブル)条件確保が必要である。
最後に、団塊の世代が老い、ニューシルバーになったとき、気分が若い、資産がある、家族より自分が大切、仕事より遊び好きという特徴のある老人たちが生まれる。
そして、わがままに生きよう、住み慣れた土地で、親しい仲間たちと一緒に、気のあうネットワークをつくり、最後は一人と覚悟すると、ニューシルバーというより著者自身の考えを示している。
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