保坂隆編著「平常心 -人間関係で疲れないこつ-」中央公論新社2008年9月発行、中公新書ラクレ289、を読んだ。
裏表紙にはこうある
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私たちはギスギスした生活の中で平常心を失いがち。ここ一番という大切な場面でマイナス思考になる。そうならないためにどんな方法が必要なのか。精神医学の専門家がまとめて紹介する。
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大事な試合や、重要な会議になると、アガってしまい、失敗する。小さいことにクヨクヨする、まわりの声が気になるという人がいる。
かわし方、さらりと受け流し方、迷いにピリオドを打つ方法など心のバランスをとり、平常心を保つためにすぐにできる63の心がけ、心を鍛えるコツを精神医学の専門家が教えといううたい文句だ。
前半はたいていの人が分かっているが、なかなかできないことが書かれている。
「プロローグ」には、“失敗は次にミスをしないようにするためのステップだと考えてしまったほうが良い”、“人間の精神には、すばらしい復元力(ホメオスターシス)がある。・・心のバランスをとるためには、忘れることも必要なのである。”
「第1章 小さなことでクヨクヨしない-平常心を知るために」には、“イライラし過ぎると平常心が失われる”、“自分は自分、他人と比べない”などだ。
「第2章 人間関係で疲れない-平常心を身につけるために」でも、“減点法ではなく加点法で相手を見る”、“無理をして人とつき合う必要はない”などが並ぶ。タイトルだけだと当たり前なのは当然だが、内容も「これだ!」という具体例はない。もっとも、心のあり方に関するハウツーものを読んだだけで、すっきりと悟ることができるはずがない。この本を読んで、それを契機として自分でいろいろ考えて、人間関係で悩むことが少なくなる自分なりの方法を会得するのだろう。
“満員電車の窓から富士山が見えた。それだけで今日は良い日だと思うようにする。そうすれば、平穏が得られる。” そういえば、「明日(あした)と言う日は、明るい日と書くのね」という歌詞があったのを思い出した。
具体的に著者が勧めるのは、一人で楽しめることを持つことや、一日一回何も考えず自分自身に意識を集中する時間を持つことなどだ。
そして、第3章 まわりの声を気にしない-平常心を失わないために、第4章 弱気にならない-平常心を発揮するために、第5章 アガらない・ドキドキしない-平常心を鍛えるために、と続く。
最後は、“とにかく笑顔をつくってみる”で終わる。米国のビジネススクールの卒業記念品の小型のチェック鏡を持ち歩いている人がいる。鏡には笑顔マークが薄くプリントされていて、自分が笑顔になっているかチェックできる。気持ちが荒れているときでもともかく笑顔を作ってみることを著者は勧める。
著者の保坂隆は、慶應義塾大学医学部卒業後、同大学精神神経科入局。1990年より2年間、米国カリフォルニア大学へ留学、1993年東海大学医学部講師、2003年教授。日本総合病院精神医学会理事、日本サイコオンコロジー学会理事、日本スポーツ精神医学会理事。
私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)
この本を契機としていろいろな場面で心のあり方を具体的に考えてみたい人にはお勧めできる。