袖井孝子著「女の活路 男の末路 -老いの時代を生き抜くチカラ」シリーズCura、中央法規出版2008年7月発行を読んだ。
裏表紙にはこうある。
女性と男性では、どのように老いていくか、いかに老いを受容するかなどに違いがある。老いを生きるうえで、夫婦・親子関係、お金、介護、住まい、シングルライフなど、さまざま問題に直面するが、そうした問題で生ずる男女の意識のズレや葛藤、要因等を社会学的視点から分析し、その解決策を探る1冊。
題名は面白そうだが、内容は平凡だ。いかにも学者の本らしく、バランスよく、まんべんなく老年の男女の問題を語り、調査結果なども示してわかりやすいが、いろいろなメディアで既に伝えられていることしか書いてないし、とくに特徴ある視点も強調する論点も感じられない。
目次
1.老いに見る男女の相違、2.女はなぜ長生きなのか、3.老いへの入り口、4.第二の人生活動、5.なぜに貧しい女性の老後、6.老後はどこに住むか、7.定年後の夫婦、8.重層化する親子関係、9.シングル・ライフ、10.介護はなぜ女の役割か、11安らかな終わりの時のために、12.ともに老いる超高齢社会
いくつか抜き出す。
何歳以上が高齢者か?
およそ70歳以上と考える人が半数以上で、一般に自分の年齢より上の世代を高齢者とみなす傾向にある。(2004年内閣府)。
離婚時の年金分割でも、せいぜい月12,3万円程度で、しかも妻本人が25年間加入したという条件で、支給は65歳に達してからだ。それでも、「離婚した女性は死ぬまで分割された年金を受け取ることができるし、再婚をしても、・・・受け取り続けることができる。逆に、夫のほうは、前妻が再婚してもいったん失った年金分は戻らないし、離婚を繰り返せば年金はどんどん削られていく。」
「夫の親を介護するのは当然視されるが、妻が自分の親を介護することについては、妻自身にも後ろめたさがある。そこで、自分の親を引き取って介護している娘については、本人ではなく、そうしたことを許している夫が「できた人」として賞賛されるのである。」
著者の袖井孝子(そでいたかこ)は、1938年名古屋市生まれ。国際基督教大学卒。東京都立大学大学院博士課程修了。東京都老人総合研究所主任研究員、お茶の水女子大学助教授、教授を経て定年退職。内閣府男女共同参画会議議員、シニア社会学会会長等。お茶の水女子大学名誉教授、東京家政学院大学客員教授。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)
本書に、「定年後の生活にうまく適応しているのは、どちらかというと落ちこぼれサラリーマンだった人である。」とある。
これは、少なくとも私の場合には当たっている(トホホ)。かっての私の職場の場合は、昼休みにジョギングしている連中を見ると、まあ既にそこまでだなと思える人が走り始めるケースが多かった。「最初はなんとか若い人に頑張って付いて行こうとしたけど、今じゃどんどん追い抜かれるのをなんとも思わなくなっちゃたよ」という私に、お仲間が、「それが会社生活でも癖になっちゃって」と嘆いてみせた。
この本の評価理由は最初の方に書いたので、配偶者に先立たれた中高年への調査結果*の一部をご紹介。
*河合千恵子「配偶者を喪う時」廣済堂出版、1990年
「話し相手、相談相手がなくなった」「日常生活が不自由になった」「家事が負担になった」「健康管理の面でゆき届かなくなった」が男性は2-5割だが、女性は数%。
「寂しくなった」は男性が8割強、女性は2/3に過ぎない。
女性が男性を上回るのは、「不用心になった」「生活が苦しくなった」「大工仕事や部屋の模様替えが思うに任せなくなった」の3項目のみ。
これには女性である著者もさすがに、「これでは、夫は、まるで用心棒か便利屋代わりではないのか、と少々気の毒にもなる。」と言っている。私も、身体を鍛え、技を磨き、せめて大工や便利屋代わりが務まるようにせねば!