hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

筑紫哲也「スローライフ-緩急自在のすすめ」を読む

2009年08月22日 | 読書2

筑紫哲也著「スローライフ-緩急自在のすすめ」岩波新書1010、2006年4月発行、を読んだ。

裏表紙にはこうある。
IT革命の進行の下で、いま暮らしと仕事のあらゆる領域でスピードや効率を求める勢いが加速している。だが、他方でその潮流への根本的な懐疑も確実に拡がっていよう。「秒」に追われるニュースキャスターならではの痛切な問題意識に立って、「スロー」に生きることの意味と可能性を全国各地の食生活・教育・旅などの実例から考える。


本書は月刊読書誌「図書」に2005年1月から15回連載した「緩急自在のすすめ」を基にしている。

スローライフ(Slow Life)とは、生活様式に関する思想の一つで、地産地消や歩行型社会を目指す生活様式を指す(ウィキペディア)。筑紫さんの造語との話もある。

スローフード(Slow Food)とは、その土地の伝統的な食文化や食材を見直す運動、または、その食品自体を指す言葉(ウィキペディア)。その土地の産物である、素材の質の良さが保たれている、その土地の風習に合った生産法で作られている、その土地に活気を与え、郷土の社会性を高める食品、という4つの条件がある。

LOHAS(ロハス)とはLifestyles Of Health And Sustainability (健康で持続可能性のあるライフスタイル)の略。



目次
1.「それで人は幸せになるか」
2.スローフード、9・11、一神教
3.ファストフードの時代
4.寿司と蕎麦、そして「地産地消」
5.「食」の荒涼たる光景
6.小さな旅、スローな旅
7.失われた「子どもの楽園」
8.急ぐことで失うもの
9.「学ぶ」ということ
10.「スローウエア」「ファストウエア」
11.ロハスのすすめ、森林の危機
12.「木」を見直す
13.長寿と「人間の豊かさ」
14.スローライフ、北で南で
15.真の「勝ち組」になるために



この国ではまちでも村でも、今では遊んでいる子どもの姿はまず見られない。・・・「この国には何でもあるが、希望だけがない」(村上龍)


日本人の10人に4人は長生きしたいとは思わない(国立長寿医療センター)


・・・自分がその年齢にさしかかってわかったのは、高齢者を高齢者であるが故に、罵ったり、おとしめたりする表現は大手をふって罷り通っていて、咎める者はほとんどいないことである。「エイジズム」(年齢差別)という語は、「セクハラ」とちがって全く定着していない。




筑紫哲也は1935年大分県生まれ。キャスター。ジャーナリスト、スローライフ・ジャパン理事。1959年早稲田大学政治経済学部卒、朝日新聞社入社。政治部記者、ワシントン特派員、「朝日ジャーナル」編集長、編集委員などを歴任し、1989年退社し、10月からTBSテレビ系「筑紫哲也NEWS23」キャスターとなる。2008年11月肺がんのため死去。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

筑紫さんが、多忙の中、地方を回って地に着いたスローライフに関連する新しい動きを見つけたり、自分で起こしたりした記録だ。経済効率一辺倒の考えが、日常生活にまで浸透している現在、この本を契機として、今一度、自分の生活を見つめ、社会のあり方を考えてみたい。

筑紫さんは、一部の人から賛美される一方、批判され、賛否両論を巻き起こすことが多かった。少数派としての意見でもTVで恐れずに主張するが、強硬ではなく相手を理解しようとする柔軟な姿勢には、私は好感を持った。最近では侮蔑の対象にしかならないいわゆるリベラル派文化人の中では人気を保っていたと思う。



コメント
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