只野範男著「『無税』入門」飛鳥新社2007年10月(第1刷)発行を読んだ。
サラリーマンは所得税、住民税などを毎月給与から天引きされている。この税金を減額することはできない。せいぜい、確定申告して10万円を超えた医療費分を所得から差し引くことができるくらいだ。
著者が薦める方法は、副業を持って、税務署に「開業届」を出し、サラリーマン兼自営業者になり、副業収入からたっぷり必要経費を引いて、赤字の事業所得を給与所得と合計し、合計所得が赤字として確定申告することだ。
給与所得、事業所得、不動産所得、譲渡所得、山林所得は黒字と赤字を損益通算できる。例えば、給与所得400万円、事業所得が赤字500万円なら、真の所得は-100万円になり、給与から引かれた税金は、確定申告することにより、後に還付され、結局無税になるという。
著者はサラリーマンのかたわらイラストレーターで、イラストの製作・販売の個人事業主として開業届を出してある。副業では、領収書は保存してあるが、従業員なし、仕入れなしで帳簿もつけてないという。なお、副業禁止になっている会社もあり、少なくとも届出はしておいた方が良い。
個人事業主としないと、イラスト販売は雑所得にしかならない。必要経費25万円がかかれば、原稿料収入(20万円)では赤字で所得0となり、源泉徴収料(22,222円)が戻ってくるが、それだけだ。つまり、事業所得とせず、雑所得のままでは、その赤字は給与所得と相殺されないのでうまみが少ない。
何が事業で、何が雑所得に過ぎないかはこの本を読んでもはっきりしないが、継続的に収入がないと事業と認められない。しかも、この場合の目的からいって、必要経費をどんどん載せて、赤字にできない事業では意味が無いことになる。
著者は、イラストの製作・販売を事業としていて、賃貸住宅の家賃、光熱費、通信費の半分を事業用として必要経費にしている。そして、この事業が赤字になれば、給与から、各種控除のほか、この赤字を引いて、総課税所得がマイナスになり、確定申告することで、支払った所得税(給与分+イラスト分+株式配当分)が全額戻ってくる。
著者の只野範男氏は、繊維関係の中小企業に勤め、来年定年の総務第2課営繕係長とある。
私の評価としては、★☆☆☆☆(一つ星:無駄)
著者の進める無税化方法は確かに一つの方法だと思うが、本当に税務署から認められる方法なのか確証がない。著者は37年間も税務署からお咎めがないから安全だし、何か言われたら直せば良いというが、たまたま今までは引っかかっていなかっただけかもしれない。少なくとも、税務署からみれば、事業として認めるか、事業に必須な必要経費なのか、グレーゾーンなのではないだろうか。
おまけにたとえわずかでも継続的に収入があり、事業として認められる仕事があり、必要経費が十分積めるサラリーマンはそんなに多くいないだろう。
内容も115ページも必要でなく数ページで十分なのに、同じことを何回も繰り返し、後半30ページ以上は税金の一般的な解説を付加している。
私は、自宅を人に貸し、引越し先で部屋を借りていて、差し引き赤字だ。しかし、確定申告では、年金に加えて不動産収入があることになり、その分税金が増加する。貸家にともなう必要経費は修理などそれほど積めるものでもなく、借家代を必要経費にしたいくらいだ。この本のように、不動産事業として届け出れば、もっと必要経費が積めるのかもしれないが、税務署からの情報に、貸家を不動産事業として届けるには、規模など明確な指標があったという記憶があり、多分無理だろう。