hiyamizu's blog

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吉田修一「悪人」を読む

2009年12月05日 | 読書2


吉田修一著「悪人」2007年4月、朝日新聞社発行を読んだ。

本書の公式ホームページのあらすじはこうだ。

保険外交員の女性(石橋佳乃)を殺害してしまった一人の男(清水裕一)。彼は再び別の女性(馬込光代)を連れ、逃避行に及ぶ。なぜ、事件は起きたのか?事件当初、捜査線上に浮かび上がったのは、地元の裕福な大学生(増尾圭吾)だったが、拘束された増尾の供述と、新たな目撃者の証言から、容疑の焦点は裕一へと絞られる。この事件をめぐって、加害者と被害者、そして、残された彼ら家族たちの揺れ動く日常が克明に描かれていく、彼の凶行は、何によるものなのか?その背景にひそむ、母と子の出来事。関係者たちの心情によって織りなされる群像劇は、やがて二人の純愛劇へと昇華していく。なぜ、光代は裕一と共に逃げ続けるのか?二人は互いの姿に何を見たのか?そして、悪人とは誰なのか?





初出は、朝日新聞の2006年3月24日から2007年1月29日。2010年、妻夫木聡と深津絵里で映画化される。

吉田修一が自ら代表作と称する自信作だ。唯一つの殺人事件に関連する人々、犯人、被害者、彼らの家族、友人など周辺の人々とその生活、犯人の過去が絡み合って話が積み重ねられていく。そして、遅すぎる二人の出会いが、逃走劇となって続く。ミステリーの筋道としては単純だ。しかし、実際もそうなのだが、一人の人物も、見る方向によってさまざまだ。例えば、この小説での被害者の女性、石橋佳乃は、親から見ればごく普通の可愛い娘だが、出会い系でさまざまな男を取替え、手玉に取る。そして、友人には裕福な学生と付き合っていると見栄をはる。このように、多様化、多層化した構成の中で、犯人の清水裕一は、殺人を犯し、迷い、愛し、逃げて、最後には・・・。



吉田修一の略歴と既読本リスト






私の評価としては、★★★☆☆(三つ星:お好みで)

力作といえるし、凡作でもない。数10ページで終えることもできる内容を丹念に記し、積み上げていく労作であることは確か。名作かと言われれば、しっかり書けていると答える。
まず、「悪人とは?」というテーマが通俗に落ちやすい。育った環境がとっさの犯行につながったなどと簡単に解釈、同情されやすい。罪を犯した人への同情的記述と、人の心を傷つけてもなんとも思わない人を憎憎しげに描くのも安直だ。そして、裕一や、光代が最後にとる行動も私にはしっくりいかない。

本質でないところで、一つ。

「でも、最近の子供の名前っていうのはあれですね、・・・、本人と名前がひどうアンバランスで、・・・、不憫に思うこともありあすよ。ほら、性同一性障害なんてありますけど、今に氏名同一性障害なんて問題が起こるっちゃないでしょうかね。」
本当に、最近の子供に名前にはついていけない。




コメント
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