hiyamizu's blog

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「定年前・定年後」を読む

2009年12月29日 | リタイヤ生活
「定年前・定年後」を読む

ニッセイ基礎研究所著「定年前・定年後―新たな挑戦『仕事・家庭・社会』」2007年10月朝日新聞社発行を読んだ。

10年にわたって742人の男性を追跡調査したデータをわかりやすいグラフにまとめ、さまざまな観点からの詳細な分析を行なっている。また、定年前後を過ごす男たちの具体的なエピソードを紹介している。

ニッセイ基礎研究所では、1997年から2005年まで、隔年計5回にわたって、現在まさに定年前後にある昭和8年から22年生まれの男性を追跡する「中高年パネル調査(暮らしと生活設計に関する調査)」を実施してきた。同じ調査対象者を追跡する形なので、定年後ハッピーに生活している人は、定年前どのような準備をしていたかなどの実態を明らかにすることができる。

第1章 定年世代のこれまで・これから
バブル時代の企業戦士たちが、定年後、家庭、社会とどう向きあうか。

第2章 定年後、働く

「働かなければならないので働く」という男性は、定年前は7割強で、定年後は5割強へ減少し、「働きたいので働く」は、20%から定年後は約25%に増加する。しかし、定年後の継続雇用者の給与水準は7割減となる。

第3章 家庭を見直す
老後の生活の中心は、定年前の59%、定年後の66%が「家族との生活」で、19%、17%が「趣味」となる。生きがいを感じるときは、「趣味など自分の好きなことをしているとき」が7割、「家族と団らんのときを過ごす」が6割と、家庭の重要さは増加する。

定年前に夫婦の意思疎通がよいと感じていた人は、妻に対して「苦楽を共にする伴侶としての役割」を期待する。意思疎通が出来ていないと感じる人は、「自分の身の回りの世話をする役割」を期待する傾向が強い。
夫婦が適当な距離を保つことは必要だ。互いに礼儀やマナーを守り、別々に外出する機会を持つ。「者間距離」が必要。(作家の沖藤典子)

第4章 社会に生きる
定年後の男性は、会社を離れた新しい生活でのビギナーとなる。会社とは違う多種多様な人々の集団と付き合うことになる。
地域デビューは、慣らし運転期間が必要なので、定年前から徐々に進めるのが望ましい。仕事をしながらでも社会活動を生きがいにできる。ただし、社会活動は十分な資産と健康があってこそだ。

終章 定年後、輝く
人生80年の現在、定年後のライフデザインが必要だ。健康や資金の制約も考慮しなければならないが、「妻の説得」がもっとも重要で、困難な制約となる。

以上のように、定年前の日常から定年後の生活に入るためには、ギアを切り替える必要がある。さらに、健康、介護の問題や、万が一の場合の蓄えなど、75歳以上の高齢者の暮らし方には再度ギアを切り替える必要がある。漠然とした不安を抱えながら、それでも、楽観的に定年後を楽しむ心の余裕が欲しい。



私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)

膨大であっても調査結果はしょせん平均値に過ぎないし、実例も豊富に示されているが、あくまで一例に過ぎない。問題は、個々人の状況、考え方に基づく暮らしをどう築くかだ。その考え方をはっきりさせるために、資料が豊富な割りには読みやすく、構成もきちんとまとまっている本書は参考になる。
定年後の人より、これから定年を迎える人に読んでもらいたい。

定年後に、かっての職場での地位などを自慢げに話すのはルール違反だし、みっともないことだという事はもはや常識となっていると思うが、本書にはこんな話がある。
定年後に植木の剪定講座に参加した男性が、講師の親方に植木バサミの扱いを厳しく注意され、まだギアチェンジができない男性は、思わず、叫ぶ。
「俺には100人の部下がいたんだぞ!」
一瞬、場が凍りつき、間をおいてから、親方が「だからどうした」と言う。
次回から、この男性は欠席した。
この男性の気持ちは分からないではないが、こういう人は、会社にいたときから、自分が偉いからこの地位にあると、勘違いしていたのだろう。他の人でも十分そのポストはこなせたはずなのだが。



特に定年直後は奥さんとの関係が最も重要かつ難しいとの話も、いろいろなところで指摘されている。この本にも、以下のような、怖い話がある。

熟練離婚した女性58歳は言う。
「直接の理由、というのは決定的なものは思い当たらないんです。でも、日常生活の中での夫との気持ちのずれをそのままにしながら、ずーと自分が我慢している、という感覚で過ごしてきました、一つ一つは小さな『我慢』だったのですが、それを放っておいたら、いつの間にか大きな溝ができていたのに気がつきました。もうそれは修復できないものでした。残りの人生を我慢し続けるのはいやだったんです。」

説得力ありますね。怖いですね。男性は、手遅れとはいえ、せめて定年前には状況を把握、自覚して、反省の弁を述べ、奥様に改善へのかすかな希望でも持ってもらえるように、何かきっかけ、兆候を見せなければいけません。ハイ、そうでした、反省しています。










コメント
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