重松清著「希望ヶ丘の人びと」2009年1月小学館発行を読んだ。
主人公の私、田島は、小学五年生になる息子と中学三年生の娘とともに70年代初めに開発されたニュータウン・希望ヶ丘にやってきた。そこは、2年前にガンで逝った妻がおりにふれて懐かしがっていた街で、彼女の親友や、初恋の人がいた。
希望ヶ丘には、主人は大企業の課長クラスで、妻は教育熱心、こんな住人ばかり。地元の人とは一線をかくし、均質な街で、すこしでも外れた者を排除する街だった。いじめ、学級崩壊、モンスター・ペアレント、家族の希薄なコミュニケーション、その街で起こる厳しい現実に、激しく傷ついたことのある子どもと大人が立ち上がり、「希望」を語れるようになる。
「週刊ポスト」に2006年12月から2008年5月に連載したものに加筆したものだ。
重松清の略歴と既読本リスト
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)
細かいこと言えば、あちこち突っ込みどころ満載で、しかも510ページとやたらと厚い本だが、ともかく気楽に楽しく読める。まるで昔のユーモア小説だ。獅子文六。え?知らない?「てんやわんや」「自由学校」「娘と私」有名だよ。昔は。
主人公は田島なのだが、実際の主人公は、前半は亡くなった妻の佳子で、後半はエーちゃんだ。矢沢永吉になりきっている漫画チックなエーちゃんのセリフ「そこんとこ、よろしく」(“ろ”は巻き舌で)や、「ロケンロール」が読んだ後しばらく、何かと口から出そうになり困った。(それって、単なるお調子者っていうことじゃない)
蛇足:文中、曲名や、一部だけの歌詞がいくつか引用されているが、奥付に日本音楽著作権協会JASRACの91個もの(連番)許諾番号が書かれている。この程度で許諾とは、アンチJASRAC派の私の神経を逆なでする。