柚月裕子『朽ちないサクラ』(徳間文庫 ゆ7-1、2018年3月15日、徳間書店発行)を読んだ。
裏表紙にはこうある。
警察のあきれた怠慢のせいでストーカー被害者は殺された!? 警察不祥事のスクープ記事。新聞記者の親友に裏切られた…口止めした泉は愕然とする。情報漏洩の犯人探しで県警内部が揺れる中、親友が遺体で発見された。警察広報職員の泉は、警察学校の同期・磯川刑事と独自に調査を始める。次第に核心に迫る二人の前にちらつく新たな不審の影。事件には思いも寄らぬ醜い闇が潜んでいた。(解説:村上貴史)
米崎県警広報広聴課に勤務する森口泉は、なり続ける電話対応に追われていた。県警平井中央署の生活安全課のいつも真面目な辺見がストーカー被害届の受理を先延ばしにしていて、その間にストーカーの安西が愛梨さんを刺し殺してしまった。さらに引き延ばしの理由が平井中央署の慰安旅行のためにだったことが米崎新聞にすっぱ抜かれて、県民からの非難が殺到しているのだった。
泉は途中入庁の29歳で4年目で、県民安全相談係だ。同じ係にはベテランの新井美佐子がいる。広報広聴課長は元警備一課(公安)の富樫隆幸。
泉がつきあっている3歳下の平井中央署の生活安全課の刑事・磯川から2週間前の慰安旅行の土産を貰ったこと、それが美味しかったと親友の米崎新聞の県警担当記者の津村千佳に話したのだ。話してしまってからはっとした泉は絶対に記事にしないでと千佳に頼んだのだ。
記事が出た後、泉はスクープ記事が千佳に違いないと追及した。しかし、千佳は私ではないと言い張る。そして、「この件には、なにか裏があるような気がする」とつぶやく。
千佳は死体で発見され、泉は「ぜったいに犯人を捕まえる」と、磯川の協力を得て、親友の死の謎を調べ始める。
米崎県警の捜査一課長は富樫と同期の梶山。生活安全課の課長は56歳の杉林。磯川が探し出した情報源につながる生活安全課の臨時職員の百瀬美咲は自殺し、杉林と不倫していたとわかる。
米崎新聞の報道デスクの兵藤洋は、千佳の不倫相手。
この作品は、2015年2月徳間書店より刊行された。
私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
ストーカーの被害届を受け付けず、殺人事件が起こる。なぜ届を放置したのか? スクープ記事を書いたのは千佳? 千佳は誰を追っていて、誰に殺されたのか? 導入部は快調に疑問を積み重ねる。
警察内部の人間関係、組織の動き方なども良くかけている。組織で働いたことがなく、21歳で結婚し子育てしていた著者は、徹底的に調査して書いているのだろう。
謎解き、犯人捜しは、伏線をたどり、消去法をとればこの本の半ば過ぎで、誰かのおおよその推定はつくので意外性はあまりない。
結局犯罪は解決されたとは思えない終わり方となり、泉が刑事になろうと決心するという結末はやむを得ないとは思うが、すっきりはしない。
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