hiyamizu's blog

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桐野夏生『抱く女』を読む

2016年03月22日 | 読書2

 

 

桐野夏生著『抱く女』(2015年6月30日新潮社発行)を読んだ。

 

宣伝文句

この主人公は、私自身だ──。1972年、吉祥寺、ジャズ喫茶、学生運動、恋愛。

「抱かれる女から抱く女へ」と叫ばれ、あさま山荘事件が起き、不穏な風が吹く七〇年代。二十歳の女子大生・直子は、社会に傷つき反発しながらも、ウーマンリブや学生運動には違和感を覚えていた。必死に自分の居場所を求める彼女は、やがて初めての恋愛に狂おしくのめり込んでいく──。揺れ動く時代に切実に生きる女性の姿を描く、永遠の青春小説。

 

単行本のオビ

恋愛も闘いだよ 毎日が戦争 1972年、吉祥寺、ジャズ喫茶、学生運動 女性が生きづらかった時代に、切実に自分の居場所を探し求め続ける20歳の直子。

 

 

1972年、学生運動が目的を見失い、悲惨な内ゲバの嵐が始まり、荒れた希望のない季節に入るが、やがて思考停止の高度成長へ向かう時代。折に触れ女性差別を感じながら、あちらこちらにさまよう女子学生・直子の9月から12月までの3カ月。

 

 

「どうせ、この先、世の中で出て一生働き続けなければならないならば、今はこうして怠惰に過ごしてやれ、という自棄な気分がある。」

 

「男と比べて、女は何かひとつ余計に叱られるようにできているのはどうしてだろう」

 

「新堀、吾郎、中本。今に、丈次やタカシとも寝るかもしれない自分。いったい男に何を求めているのだろう。自分が不思議で怖かった。」

「男が自分を欲していることで、自分という女が成り立っているような錯覚を起こすんだよね」。

 

 

初出:「小説新潮」2013年1月号~2014年6月号

 

 

私の評価としては、★★★(三つ星:お好みで)(最大は五つ星)

 

桐野さんが成蹊大生だったあの時代の風俗小説を書こうと思って始めたとどこかで読んだ。しかし結局、女性の生きづらさ、時代の変化の中での若者のもがきを描くことになってしまったのだろう。

いかにも気楽に書いていて、桐野さんの他の作品のような凄みは全くない。

 

 

主人公のあまりの考えなさの振れ幅に、「勝手にすれば」と思ってしまう。しかし、私も20歳のときには全くあきれたものだった。思い出すのも嫌だ。

 

吉祥寺のいろいろな店、京王井の頭線の三鷹台、そして東急東横線の学芸大学まで馴染みな所が出てきて、楽しめた。

ひとつだけ引用すると、「吉祥寺駅と五日市街道を貫くバス通りから東側に広がる一帯は、キャバレーやトルコ・・・などが広がる大歓楽街だ」(行政はここに図書館を建て、風営法上、現状以上に、それらの店が増えないようにしたので、今は小歓楽街になっている。)

 

 

三浦直子:主人公。成蹊大学生。実家は荻窪の酒屋。長兄良樹は大阪の電機メーカ勤務。次兄は早大生で革マルの活動家の和樹。

中本祐司:雀荘「スカラ」での麻雀仲間。成蹊大生。男っぽい。

川原旬子:美容師。中本の彼女。

タカシ:麻雀仲間。成蹊大生。御殿山(吉祥寺)の邸宅に住む。

丈次:麻雀仲間。吾郎の中学の同級生。

吾郎:麻雀仲間。成蹊大生。税理士の息子。

新堀:麻雀仲間。バンドをやっている。直子が何回かアパートに泊まったことがある。

宮脇泉:直子の友人。一浪で成蹊大同級生。ジャズバー「CHET」でバイト。四角い顔で肉感的な身体。

曽根:泉に執心。ジャズバー「CHET」でバイト。

桑原清明:ジャズバー「CHET」のオーナー。直子もバイトすることになる。

高橋隆雄:泉の元カレ。赤軍派活動家。

青野:隆雄の彼女。Y女子大4年。

アキ:ジャズシンガー

深田健一郎:ドラマー。バンドの手伝い。

 

目次

第一章 1972年9月

第二章 1972年10月

第三章 1972年11月

第四章 1972年12月

 

 

桐野夏生(きりの・なつお)

1951年金沢市生れ。成蹊大学卒。

1993年『顔に降りかかる雨』で江戸川乱歩賞

1998年『OUT』で日本推理作家協会賞

1999年『柔らかな頬』で直木賞

2003年『グロテスク』で泉鏡花文学賞

2004年『残虐記』で柴田錬三郎賞

2005年『魂萌え!』で婦人公論文芸賞

2008年『東京島』で谷崎潤一郎賞

2009年『女神記』で紫式部文学賞

2010年『ナニカアル』で島清恋愛文学賞、2011年同作で読売文学賞

を受賞。

その他『ハピネス』『だから荒野』『夜また夜の深い夜』『奴隷小説』。

中学の時から吉祥寺に住んでいたという。

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