太田康夫著『ギガマネー 巨大資金の闇』(2017年8月23日)を読んだ。
資産が100万ドル以上の人は世界に3400万人いて、世界の全資産の45.6 %を占めている。
格差は拡大し、お金持ちば100万ドル以上保有のミリオネアだったが、大金持ちは10億ドル以上保有のビリオネアに変わった。
富裕層をお客とするプライベート・バンキングは、マフィア・テロ集団のマネーロンダリングに利用されたり、呼び込んだりして、国際社会から変革を迫られた。その結果、スイスの諸銀行は伝統ある顧客の秘密保持を断念せざるを得なくなった。さらに、パナマ文書が暴露され、タックスヘイブンでの資産隠しにも日が当たるようになってきた。
そして、米国など先進国政府との攻防戦が激化している。
例えば、既に1960年代、米内国歳入庁(IRS)は、
スイスからニューヨークに宛てられた返信先が記されていないすべての航空便の封筒の写真を撮って保存した。次に捜査エージェントがスイスの銀行に口座開設申し込みを送り、それに対する銀行からの返信用封筒の消印ナンバーを取得。航空便写真と消印ナンバーを突き合わせることで、スイスの銀行の顧客リストを作っていたのだ。
一方、日本では、外資系プライベート・バンキング、クレディ・スイス、シティ・バンク、HSBC、スタンダードチャーター銀行、ソシェテ・ジェネラルなどは次々と撤退あるいは縮小した。原因は、金融庁の資金洗浄の軽度な違反への厳しい処分、銀行・証券業務の壁などがあるが、日本の金持ちは高齢者が多く、保守的であることも響いた。
目次
第Ⅰ章 謎に彩られた歴史
第II章 不正と規制のせめぎ合い
第III章 勃興するニュー・マネーを狙え
第IV章 大競争――塗り変わるプライベート・バンキングの勢力図
第V章 日本のプライベート・バンキング――周回遅れの「透明化後進国」
終章 ギガマネーの行方
私の評価としては、★★(二つ星:読めば)(最大は五つ星)
事例がずらずら出て来て、読みにくい。私としては、具体例だけでなく、基本的構造を知りたかった。
一方では、ビリオネア全体で何名などの数値だけでなく、ヘッジファンド、アラブ系、IT長者がそれぞれ何割などギガマネーを構成する人びと、集団の概要もを知りたかった。
太田康夫(おおた・やすお)
日本経済新聞社編集委員
1959年京都生まれ。1982年東京大学卒業。同年日本経済新聞社入社。外報部、前橋支局、金融部を経て、90年チューリヒ(スイス)支局駐在、94年東京本社経済部、96年同次長、2003年編集委員を兼務。
主な著書、『金融大国日本の凋落』『グローバル金融攻防三十年』