阿川佐和子「婚約のあとで」2008年2月 新潮社発行 を読んだ。
婚約したが、彼がニューヨークに転勤になったために結婚が伸びて不安定になる29歳の村松波。許されぬ恋に走る妹の碧。愛しているのに結婚しない盲目の宙。他人との距離をけして縮めず冷静だが、波乱ある人生の凩(こがらし)。満たされた条件のなかで選択にためらう7人の女性たち。それぞれ互いにに関連する女性たちの揺れる恋愛を巧みに描いている。
しかし、女性は生活苦が感じられないお嬢様で、男性陣は気のよい男ばかりなのが、佐和子さんらしい。どろっとした話もちっともイヤラシクなく、さっぱりしているのも佐和子さんらしい。
一つだけ、挙げる。デザイナーとして活躍する真理が受けるインタビュー内容がそのまま書かれているのが面白かった。また、古風な大和撫子とは多少異なる29歳の真理の考え方が私には新鮮だった。
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男と女の関係なんて、自我を張るから破綻するのである。たかだか三十年ほどの人生に、他人に譲れないような自我なんて確立しているわけがない。いつも白無垢の精神で臨む。毎日会いたいと言われれば、そうするように努力し、・・・。無理に自分を矯正するのではなく、好きな男のそばにいたいならその人に合わせて生きていく。
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多くの男性は奥さんに対し、こんな考え方で対処しているつもりなのではないだろか。奥さんからの見方は別として。
私の評価としては、★★☆☆☆(二つ星:読めば)
佐和子さんファンは、いつもの決まりきったエッセイより面白いので、三ツ星以上になるだろう。