hiyamizu's blog

読書記録をメインに、散歩など退職者の日常生活記録、たまの旅行記など

辻村深月『嘘つきジェンガ』を読む

2022年12月19日 | 読書2

 

辻村深月著『嘘つきジェンガ』(2022年8月30日文藝春秋発行)を読んだ。

 

文藝春秋の長い長い作品紹介

詐欺をめぐる3つの物語。

『2020年のロマンス詐欺』
まさか、こんな2020年の春が待っているとは思いもしなかった――大学進学のため山形から上京した「加賀耀太」だったが、4月7日、緊急事態宣言が発令されてしまう。入学式は延期され、授業やサークル活動どころか、バイトすら始められない。そのうえ、定食屋を営む実家の売り上げも下がって、今月の仕送りが半分になるという。地元の友人「甲斐斗」から連絡が来たのはそんなときだった。「メールでできる簡単なバイト」を紹介してくれるというのだ。割の良さに目がくらんで始めた耀太だったが、そのバイトとはロマンス詐欺の片棒を担ぐことだった。早く「実績」を上げるよう脅され、戸惑いながらもカモを捕まえようと焦る耀太は、「未希子」という主婦と親密なやりとりを交わすようになる。ある日、未希子から「助けて、私、殺される」というメッセージが届く……。

『五年目の受験詐欺』
「紹介は、詐欺だったんです、私たち、騙されていたんですよ」――電話口でそう告げた女の声に「風間多佳子」は驚愕した。詐欺と言われてもにわかには信じられなかった。なぜなら、「大貴」は志望校に合格したのだから。教育コンサルタントが受験生の親向けに開く完全紹介制の「まさこ塾」に多佳子が通っていたのは、次男・大貴の中学受験に際してだった。頑張っても頑張ってもなかなか成績が上がらず苦しむ息子の姿に心引き裂かれていた多佳子は、息子を信じようと決意しながらも、つい、まさこ先生に持ち掛けられた、100万円で受けられる「特別紹介の事前受験」という甘い誘いに、夫にも内緒で乗ってしまったのだ。あれが詐欺だったなら、息子は自力で合格したのか。混乱する多佳子のもとに、「まさこ塾」で親しくしていた「北野広恵」から連絡がある。「多佳子さんにも、当時、まさこ先生からその……お誘いはあったの?」

『あの人のサロン詐欺』
「紡」はオンラインサロン「谷嵜レオ創作オンラインサロン オフ会」を主宰している。最初は漫画原作者・谷嵜レオとファンとの非公式な交流イベントだったが、谷嵜のようなクリエイターに憧れる彼らの質問を受けるうち、いつのまにか創作講座がメインとなった。紡が発する言葉を熱心に書き留める参加者たち……谷嵜レオになるまで、紡は自分がこんな風に話せる人間だとは知らなかった。自分の作品を熱心に愛してくれる皆が、紡の話に真剣に耳を傾けてくれる高揚感で、オフ会の時間はあっという間に過ぎる。しかし、じつは紡は谷嵜レオではない。谷嵜が覆面作家なのをいいことに、創作サロンの参加者にも、自分の家族にもそう偽っているのだ。これは詐欺なのだろうが、全身で谷嵜レオを生きてしまっている紡には、その考えはしっくりこなかった。ほんものの谷嵜が逮捕されてしまうまでは。

 

 

初出:「オール読物」2021年1月号、2022年6月号、2021年9月・10月合併号

 

 

私の評価としては、★★★★☆(四つ星:お勧め、 最大は五つ星)

 

「2020年のロマンス詐欺」は、東京へ出てきたばかりの若者とはいえ、簡単に騙されすぎで白けてしまう。しかし、犯人については意外性があり、結果も良しであり、終わりよければすべてよし。

 

「五年目の受験詐欺」は、そんな馬鹿な話に乗るなんてと白けそうになった。しかし、長男は優秀で、すいすいと進学し、一方次男は何時間も何時間も勉強するのに順位が上がらない。「お母さん、どうしたら、成績あがるの?」と泣いていた。こんなこと言われたら、受験詐欺にひっかかるかもしれないなと思った。

 

「あの人のサロン詐欺」は、「そんなに10年もバレないって、おかしくない?」と思ったが、まあいいや……。

 

 

辻村深月(つじむら・みづき)の略歴と既読本リスト

 

 

「子供部屋おじさん」「子供部屋おばさん」:自分の子供部屋に住み続けておじさんやおばさんになった人

「バカ、死ぬな! 死んだら殺す! ほんと、殺すから!」

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« GONZOでランチ | トップ | 12月(1)の花 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

読書2」カテゴリの最新記事