三浦しをん著『あの家に暮らす四人の女』(2015年7月10日中央公論新社発行)を読んだ。
中央公論社の宣伝は以下。
謎の老人の活躍としくじり。ストーカー男の闖入。やがて重なりあう生者と死者の声――古びた洋館に住む女四人の日常は、今日も豊かでかしましい。ざんねんな女たちの、現代版『細雪』
主要な登場人物は、“タニジュン”の名作『細雪』の鶴子、幸子、雪子、妙子と名前がかぶる鶴代、佐知、雪乃、多恵美の4人。(けして「ざんねんな女たち」ではないと思うが)
牧田佐知は自宅でささやかな刺繍教室を開く刺繍作家。37歳独身。世間知らずの苦労性だが、刺繍には誇りをもっている。
「結婚しても、家事の合間に刺繍するのは全然かまわないよ」と言った男もいた。その言葉、そっくり返す。「結婚しても、家事の合間に会社に行くのは全然かまわないよ」。
牧田鶴代は佐知の母。自分で稼いだこともない箱入り娘のまま浮世知らずの70歳近く。
谷山雪乃は保険会社で働く37歳独身。佐知と5年ほど前に偶然出会った友達。美人だが特徴のなく印象に残らない。仕事のできる女として会社で都合よく重用される。ヨガをやっていて、スリムな体形。男の影もないが、部屋はフェミニン。
上野多恵美(たえみ)は雪乃の会社の後輩で、佐知の刺繍教室の生徒。男性に可愛がられる27歳。部屋は雑然。本庄宗一という元カレがストーカーになり、多恵美は雪乃とともに、鶴代と佐知の家に転がり込んだ。四人で共同生活するようになって一年となる。
四人が暮らす150坪の古い洋館は、東京杉並区の善福寺川が大きく蛇行するあたりにあり、JR阿佐ヶ谷駅から徒歩20分。
山田一郎は、牧田家の表門を入ってすぐのところにある小屋に住んでいる80歳の老人。恩を受けた牧田家の鶴代と佐知をお守りせねばと使命感に燃えている。
やがて、雨漏り事件から箱の中のミイラを見つけて大騒ぎ。カラスの善福丸が牧田家と鶴代の過去を語る。壁紙のリフォームで佐知が一目ぼれの梶が登場。ストーカーや、泥棒、佐知の父親・牧田幸夫の幽霊などが登場する。
初出:「婦人公論」2013年11月22日号~2015年4月14日号
私の評価としては、★★★★(四つ星:お勧め)(最大は五つ星)
前半何事もなく静かに進み、女性同士の細かな心理戦でゴチャゴチャした話かと思ったら、いろいろ事件が起こり、それなりに楽しく読めた。
佐知の気持ちは良くかけていて明快にわかり、雪乃についてもはっきり読み取れる。鶴代と多美恵については、外側からその気持ちが推測できる。これらの描き方、筆力はさすが三浦さんだ。ただ、何もカラスや幽霊に語らせなくてもよいのにとは思った。