一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

折田五段、フリークラス脱出!!

2023-05-27 22:47:45 | 男性棋士
いまさら、という感じだが、折田翔吾五段が10日の対局に勝ち、直近20勝10敗の成績で、フリークラス脱出が決まった。
ただ、これはちょっと意外でもあった。というのは、折田五段はそれまで、勝ったり負けたりのイメージがあったからだ。
そこで成績を見ると、直近の12局が11勝1敗だった。
ということは、その前までは9勝9敗だったわけだ。星にするとこうなる。

○●○○●●○●●○●○●○○○●●○○○○●○○○○○○○

私の知らない間に突然勝ちだしたというわけだ。
直近11勝の中には、谷川浩司十七世名人、都成竜馬七段の名前はあるものの、A級棋士はいない。
しかし折田五段自身がフリークラスだから、誰と当たっても上位棋士なわけで、そこで20勝10敗の成績を挙げたのは立派である。
後半、ある程度白星が重なったところで、「もし負けても、ここから新たに20勝10敗の目を作ればよい」という考えのもと、冷静に対局を進めることができたのではないか。ここが、タイムリミット(引退)が間近に迫ったフリークラス棋士との差だった。
ただ残念なのは、順位戦の参加が、来年の第83期からになってしまったこと。まだ第82期順位戦のリーグ表ができていないから滑り込みセーフと思いきや、これはそういう規則だそうである。
もっとも、順位戦参加を待つ楽しみを味わえる時間ができた、とも考えられる。実際、折田五段もそんなようなコメントを残した。
棋士編入試験で合格した棋士は、そこがゴールと考えがちだが、もちろんそこからスタートである。
棋士編入組でC級1組に昇級した棋士はまだいない。折田五段が第1号となるか。注目していきたい。
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上野六段、引退

2023-05-26 23:04:41 | 男性棋士
今月16日、上野裕和六段が規定の全対局を終え、引退した。時に46歳で、早過ぎる。
上野六段は2000年10月、23歳で四段デビュー。2007年、第65期C級2組順位戦で9勝1敗の成績を取り、C級1組に昇級した。
実はこれが上野六段のピークで、この後上野六段はC級2組に落ち、2013年にはフリークラスに落ちた。それから10年、順位戦復帰が叶わぬまま、今回の引退になったものである。
上野六段は親しみやすい人柄だ。私は将棋ペンクラブのイベントや大野教室で何度かお会いした。あるとき私自身があまりにも上野六段とフランクに話したのだが、よく考えたら、私が上野六段にお会いしたのは、このときがまだ2回目か3回目だった。
上野六段の指導対局は独特で、対局前に「天使」「普通」「鬼」のカードが提示される。そしてその選んだカードによって、上野六段が指し手の厳しさを決めるのである。たとえば下手側が「鬼」を選べば、上野六段は鬼の指し手となるわけだ。
2017年5月21日、将棋ペンクラブの関東交流会で、上野六段に角落ちで指導対局をしていただいた。私は当然「鬼」モードでお願いしたが、下手有利の局面で私が疑問手を指し、形勢が急接近した。そこで上野六段が「鬼」で指せば形勢がひっくり返ったのだが、上野六段の指し手はなぜか「天使」だった。指導対局で鬼になり切れない、上野六段の優しさが出た場面だと思っている。
ちなみに上野六段は、2013年に「将棋ペンクラブ大賞・技術部門」で、大賞を受賞している。このときのスピーチも秀逸で、いまでも語り草になっている。
上野六段はある年のあるパーティーで、たまたまある女性と隣合わせの席になった。上野六段はその女性と意気投合し、そのまま結婚した。しかもその女性は、お医者さんというおまけ付きだった。
これは誰もがうらやむエピソードで、このエピソードがあれば、現役生活の短さなど、なんでもない(こともないか)。
引退直後のご本人のツイッターを読むと、「やりきった」清々しさがあった。上野先生、23年間の現役生活、お疲れ様でした。
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川上七段、竜王戦の4組残留!!

2023-05-25 23:08:25 | 男性棋士
23日の日本将棋連盟の対局結果を見て驚いた。第36期竜王戦4組残留決定戦・中村太地八段VS川上猛七段戦で、川上七段が勝っていたからだ。
川上七段は、2022年度の対局をもってフリークラスの10年を終了、引退が決まった。
ただし竜王戦は4組で、現行ではこのクラスを維持している限り、竜王戦はずぅっと指せる。これは初のケースである。
ただし5組に降級すれば、4組に復帰しない限り、2年で引退となる。しかし残留決定戦の相手は、いまをときめく新A級・中村八段である。これは誰だって中村八段が勝つと思う。というか、中村八段だって、順位戦で昇級していながら、竜王戦で降級するわけにはいかない。棋士仲間にナメられるだけである。
その状況のなか、川上七段が勝ち切ったのが偉かった。
ちなみに将棋は相居飛車戦で、双方よく戦ったが、川上七段に勝ち運があったということだ。
やむを得ないこととはいえ、順位戦の成績だけで棋士のイノチが決まってしまうのは割り切れないところもある。
川上七段は第37期竜王戦、現状維持どころか昇級を果たし、話題を提供してほしいと思う。
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武者野先生、さようなら

2023-05-13 00:13:44 | 男性棋士
この8日、武者野勝巳七段が亡くなった。享年69歳。
武者野七段は1979年3月、25歳で四段になった。そのふくよかな体型と口ヒゲはファミコンのキャラクター「マリオ」に似ており、「マリオ武者野」の異名を持つことになる。
順位戦の最高位はC級1組、竜王戦は4組で、プレーヤーとしての特筆すべき戦績はなかったが、十段戦の観戦記など多くの原稿を執筆し、日本将棋連盟理事として千日手のルールを変えた、名参謀でもあった。
武者野七段は湯川博士・恵子夫妻と信仰があったので、その縁で私も何度かご一緒させていただいた。
初対面は2018年10月、和光市で行われた「大いちょう寄席」で、客として同席したものである。当時武者野七段は総白髪になり「マリオ」のイメージはなかったが、文章から窺えるとおり、温厚な方だった。
当ブログでは2018年10月31日の記事で、そのときの模様を記している。一部をコピペしてみよう。


部屋の隅でチョコンと待っていると、徐々にヒトが集まってきた。その入りは定員の七分くらいだろうか。その一隅に木村会長、美馬和夫氏を認めたので、そちらに移らせていただいた。
すると美馬氏の前に、どこかで見たような人がいた。
「ひょっとして、武者野先生ですか?」
昼に美馬氏から、昨年、武者野七段が来席していたことを教えられていたのだ。
私が言うと、白髪の男性がチョコンと頭を下げた。まさに、武者野勝巳七段だった。
「あ、大沢さんは初めて……」
と美馬氏。
「はい、私はまだお会いしたことがなくて」
「ああそう。……先生、こちらが大沢さん、将棋が強い人で」
そんな紹介のされ方は、ちょっと恥ずかしい。
湯川博士氏も合流し、私の周りは豪華なメンバーとなった。将棋の集まりに顔を出す時、周りが有名人ばかりで圧倒されることがある。私が将棋を知らなければおよそ会えなかった方々で、自分がここにいていいのかと困惑することもある。

(中略)

「武者野先生は、千日手規約を変えた方ですもんね」
私は武者野七段に話を振る。
将棋の千日手は現在「同一局面4回出現」だが、昔は「同一手順3回」だった。だが後者のルールだと、例えば途中に「銀成」と「銀不成」を混ぜることで、半永久的に別手順が出来上がってしまう。
実際1983年のA級順位戦・▲米長邦雄二冠VS△谷川浩司八段戦は、終盤で9回も同一局面が現れたが、手順の相違で千日手にはならなかった。
また1979年の十段戦、▲大山康晴十五世名人と△加藤一二三九段との一戦でも、終盤で似た局面が延々と進行した。これら2局は結着が着いたのだが、負けた谷川八段はプレーオフを戦う羽目になり、大山十五世名人は最終的に十段リーグを陥落した。
これらの不備を一掃したのが武者野七段の提案だったわけだ。
「あの提案はね、理事会を1ヶ月半くらいで通過しました」
それくらいのスピード可決ということは、理事会も改良案の良さを認めたのだ。
武者野七段は美馬氏と語り合っている。しかし私の耳では、武者野七段の声が聞えない。私の長年の聴力検査では、人の話し声程度は聞こえるはずなのだが、おかしい。私の耳鳴りが大きいのと、武者野七段のポソポソしゃべりが、それを阻害しているのだろうか。
「先生は、どういう経緯で観戦記者になられたんですか?」
自分で聞いときながら、私は武者野七段の声がほとんど聞き取れない。で、私はかねてからの禁断の質問をしてみた。
「以前、(読売新聞文化部の)山田(史生)さんに、武者野先生の原稿が遅いって聞いたんですけど……」
すると武者野七段がコクリと頷いたので、私は大笑いしてしまった。


武者野七段が観戦記者になった経緯を聞き損ねたのは、返す返すも残念である。
なお、文中に出てくる▲米長二冠VS△谷川八段戦は、1983年3月8日に指された、第41期A級順位戦最終戦である(主催:毎日新聞社、日本将棋連盟)。

△7八同銀不成の第1図から、▲8八金△6七銀打▲8七銀△7九金▲7八金△同金▲同銀△同銀不成……。途中、先手が▲8八金と▲8七銀の受けを逆にすると、相違手順が現れる。
結局手を変えた谷川八段が敗れ、後味の悪いことになった。
▲大山十五世名人VS△加藤一九段戦は、1979年9月25日に行われた第18期十段戦挑戦者決定リーグのこと(主催:読売新聞社、日本将棋連盟)。

第2図は大山十五世名人が109手目に▲3九桂と受けたところだが、△3七銀不成▲同銀△2六銀▲2八銀を繰り返し千日手模様。後手の加藤九段はすでに1分将棋。最初の△3七銀不成を「成」に変えれば相違手順となり、いくらでも考えられる。これも大山十五世名人が負け、後味の悪い結果となった。
これらの経緯を踏まえ、武者野七段提案の「同一手順3回」から、「同一局面4回」の、新・千日手ルールが生まれたのであった。
武者野七段とは、翌年(2019年)正月の、「和光市CIハイツ将棋寄席」でも一緒になった。
ここでは「珍道中」があったので、それも自ブログ2019年1月23日の記事から一部コピペをしよう。


CIハイツ新春落語会のあとは、湯川邸で新年会がある。しかし将棋ペンクラブ一般会員の参加は少なそうで、私は若干躊躇している。
中二階の踊り場にいると、恵子さんが現れた。私の参加の是非を問うと、恵子さんは私に委ねるふうだった。私は迷ったが、参加することにした。
辺りを見ると初老の男性がおり、それが武者野勝巳七段だった。そこに、行きでいっしょになった男性が加わる。湯川氏一行は出発までまだまだ時間がかかるらしい。お二方は新年会の参加組で、散歩も兼ねて湯川邸まで歩いていくとのこと。それで、私もお供に加わらせていただいた。
男性氏は「Iriyamaです」と武者野七段に挨拶した。ただ、武者野七段を棋士とは認識していなかったようだ。
「将棋は引退しました。相撲の親方みたいなもんです」
和光市駅前まで来た。湯川邸は長照寺方面なので路線バスが通じているが、私たちは初志貫徹で、そのまま歩いていく。私も前回、長照寺まで歩いていったので、道は分かっている。
だが高速道路入口の手前まで来て、前回は左折したのだが、そのあとぐるっと戻った記憶もあり、私は「ここはまっすぐ行きましょう」とお二人を促した。お二人も湯川邸の常連で、異論はないようだった。
だがすぐに、道の両隣が高層マンション群になった。こんな光景は見たことがなく、明らかに道を間違えている。しかしお二人は堂々と歩を進めている。これは……?
まさかと思うが、3人が3人とも、誰かが正しい道に導いてくれている、と考えているのだろうか?
だとしたらこれ、迷子になっているぞ!?
Iri氏が、道行く人に道を聞いた。やはり、Iri氏も間違いを認識していたのだ。
私たちは道を左側に軌道修正し、その後も何人かに道を尋ねる。しばらく行くと、長照寺に出た。これで知っている道に出た。私たちはほっと一息である。
湯川邸は、とある公園の反対側にあった。純和風の佇まいで、味がある。中からは湯川夫妻が出迎えてくれた。
「あんまり遅いんで、ケータイに連絡を入れたんだよ」
と湯川氏。しかしオフにしていたりして、誰も出なかったのだ。私たち3人は、似た者同士だったかもしれない。
すでに新年会の用意はできていて、私たち3人はテーブルのいちばん奥に配された。


いまとなっては、すべてが懐かしい。
武者野七段は体を悪くし、晩年は体調との戦いだったと思う。
将棋のルールを変えた男・マリオ武者野先生のご冥福をお祈りいたします。
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佐々木勇気七段と佐々木大地七段・2

2023-03-04 01:01:54 | 男性棋士
将棋界には3人の「佐々木七段」がいる。そのうちの2人、佐々木勇気七段と佐々木大地七段が、2月28日に行われた第94期棋聖戦決勝トーナメント1回戦でそろって勝ち、2回戦にコマを進めた。
今期勇気七段は二次予選から出場し、今回は久保利明九段を破った。
いっぽう大地七段は、何と決勝トーナメントから出場。前期は一次予選から出場し4連勝、二次予選も勝ち抜き、決勝トーナメントでも2勝した実績が評価された。そして今回は大橋貴洸七段を破った。大橋七段は通算勝率7割越えの強豪であり、ここで勝つのは素晴らしい。
かように大地七段は毎年よく勝っているのに、それが目に見える結果として反映されない。勇気七段と大地七段については、2021年7月6日も記事にしたので話がダブるが、大地七段はきょう現在249勝107敗で、通算勝率.6994である。ふつうこれだけ勝っていればA級にいてもおかしくないし、タイトル戦に出ていても納得できる。
ところが大地七段は順位戦はC級2組、竜王戦は4組である。タイトル戦は、棋王戦で挑戦者決定戦までいったことがあるが、登場はない。
そのほか王位戦では、今期で7期連続のリーグ参加となる。王位戦は陥落が4名+4名で入れ替わりが激しい。そんな中で7期在籍は偉業といえる。
今期順位戦は現在7勝2敗だが、下位の古賀悠聖四段が8勝1敗で自力。また、1枚上に7勝2敗の梶浦宏孝七段がいる。よって、今期も相当厳しい。
ちなみに、勇気七段はB級1組で8勝3敗。最終戦の屋敷伸之九段に勝ち、下位で9勝2敗の中村太地七段が羽生善治九段に敗れれば、順位の差で逆転昇級となる。
どちらにも昇級してもらいたいが、棋聖戦も大事である。どちらも挑戦者決定戦まで勝ち進み、佐々木七段対決が実現すれば愉快だ。
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