一公の将棋雑記

将棋に関する雑記です。

第7回世田谷花みず木女流オープン戦・3

2014-05-07 00:48:25 | 将棋イベント
さて、昼食である。昨年は二子玉川駅のこっち側、多摩川方面の食事処を探索したから、今年はあっち側を行ってみる。
15分くらいぶらぶらしていたら、中華料理屋があったので、入ってみた。というか、そこに行くまでこれといった店がなかったのだ。
タンメンを頼む。700円はまずまずの値段か。店内では年配の外国人が定食系の食事を摂っていた。ほかに客はいないが、何となく期待できると思った。
出されたタンメンは美味かった。まさに昔ながらのタンメンで、奇を衒うことなく基本に忠実に作られており、王道を行く味だった。
この店がなぜ期待できたかといえば、夫婦で営業していたからである。やはり生活がかかっているから、つねに精進を怠らない。結果、みなに愛される味を提供してくれるのである。この店が都心のオフィス街にあれば、間違いなく行列ができる。
蛇足ながら、行列で繁盛している店は、そこが本当に美味しいのかどうか、冷静に考えたほうがいい。自分の舌に正直になったほうがいい。ちなみに私は、日本全国に「知る人ぞ知る」名店を知っている。それが秘かな自慢である。
とにかく私は大いに満足し、その足で多摩川沿いに出た。昨年のいまごろ、漫談家の牧伸二が多摩川に飛び込んで自殺したことを思い出した。
決勝戦の開始まで1時間ばかり早いが、私は対局場に戻ることにした。

玉川高島屋南館6階では、子供竜王戦の決勝戦が行われていた。子供竜王戦は、小学校低学年の部、高学年の部、中学校の部の決勝戦が行われる。現在は小学校高学年の対局のようだ。
解説は中村修九段。聞き手は飯野愛女流2級である。
「▲3九金、△7八飛成」の声が聞こえる。大盤がよく見えなかったが、横歩取り系の将棋では、あまり聞かれない符号だ。
が、よく見たら、大変なことになっていた。すなわち、後手君が△2八飛と金、桂取りに打ったのに対し、先手君が▲3九金と寄ってしまったのだ。後手君はすかさず△7八飛成と金を取る。プロ同士ならこれで終了といったところ。
しかし先手君は悪びれず▲4八金。私ならここで、△7三の角で▲4六の銀を取り、▲同歩△4七銀として、どうだと胸を反らせるところ。しかし後手君は無理をせず、△8九竜と桂を取りながら王手。これでも後手君の勝勢である。
だが将棋は何が起こるか分からない。このあと、後手君が竜の素抜きをうっかりし形勢が逆転、以後も後手君にチグハグな指し手が続き、先手必勝になってしまったのだ。
とにかく飛車角4枚が先手君の手に渡り、後手君は指しようがない。それでも後手君は指す。もっとも、120%敗勢でも投了しないプロがいるくらいだから、後手君の指し手などかわいらしいものだ。
また感心するのが中村九段で、最初は勝勢だった後手君の心情を慮り、これはこういう狙いです、と好意的な解釈をするのである。飯野女流2級も投げやりな態度を取らず、双方の指し手に感心している。中村九段のオヤジギャグも巧みに受け、私は彼女に好感を持った。飯野女流2級は苦労人でもあり、今後いい聞き手になるのではないか。
やがて先手君、勝利。ずいぶんな乱戦だったが、島九段によると、本日ここまで近くの小学校の体育館で、160人参加のトーナメント戦があり(応募者はその数倍)、彼はそこを勝ち抜いてきたとのこと。やっぱり彼らも、実力があるのだ。
局後のインタビューで、後手君は「(秒読みで)何が何だかわけがわからなくなった」とつぶやいた。小学生に秒読みは酷だったか。ともあれ後手君の巻き返しを期待したい。
続いては中学生の部である。解説は島朗九段。聞き手はもちろん、鈴木環那女流二段である。
先手君の居飛車明示に、後手君は三間飛車。急戦調になり、中央から戦いが始まった。
後手君、△4四歩と銀取りに突き出す。対して先手君の▲2六飛回りが強手だった。勢い△4五歩と銀を取るが、▲2三飛成と飛び込んで、これは先手が銀損でもいい勝負。中学生らしいキビキビした戦いである。
気が付けば、最前列も客が埋まっている。昨年は、女流将棋の決勝戦を見たいがために、荷物だけそこに置き、そのままどっかに行っている人間のクズがいた。今年はそういう手合いは一掃されたようで、めでたい。
後手君、△5二飛と敵竜にぶつける。一目疑問手に見えるが、島九段は「若さですねえ」と感心したように言う。こういう元気あふれる手は、齢を重ねた自分には指せない、と意味であろう。
以後もはつらつとした戦いが続いたが、先手君が押し切った。
表彰式では世田谷区長が出席し、入賞のひとりひとりに賞状が手渡された。副賞?は、鈴木女流二段の「東日本復興ポスター」で、遠目からはよく見えなかったが、鈴木女流二段の対局姿が載っていた。これは、小中学生には猫に小判。有料でいいから売ってもらえまいか。
最後に飯野健二七段の講評。健二七段はいうまでもないが、愛女流2級のお父さんである。
「勝敗はともかく、これからも将棋を続けることで人間的成長を云々…」
内容は忘れたが、さすがに如才ないスピーチだった。
時刻は午後2時を過ぎ、いよいよ決勝戦の開始である。
中村真梨花女流二段、加藤桃子奨励会1級が登場した。決勝戦は、恒例のきもの姿での対局となる。解説と聞き手は引き続き、島九段と鈴木女流二段が務める。
加藤奨励会1級の先手。▲7六歩で、戦いの火ぶたが切られた。
(つづく)
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